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道。 うちのこまとめページ

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ハナときょうだいの話

【2014.12.17】

※レンダーシアストーリー2.3のネタバレを含みます。ご注意ください。
 クエスト369「過去からの贈り物」クリア後の話になります。



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主人公の兄弟に作られたぶたさん・ハナと、主人公の話です。兄弟ネタぶわっ。
オフラインとの繋がりには、グッとくるものがありますね…。
ちなみにラスボスは未クリアなので、矛盾等あったらすみません。クエスト369で滾った勢いで書いてしまった。ハナ可愛いよ。
物書きでもなく本も読まないので、読みにくい文章ですみません…小説って何だろう。愛だけは詰めました。

カイトとセカル、それぞれのお話。話の特性上、別次元です。


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≪カイトside≫

「ねえねえ、クウトはどんな風だったの?」

そこかしこに草が生い繁っていて、辺りは荒れ放題。
家ややぐらなど、建造物はどれも崩れかけている。
焼け焦げた木々が剥き出しになり、あちこちに突き出ていた。

滅ぼされてしまったエテーネの村。
腐った沼が毒々しく泡立つ地面とは対照的に、空は晴れ晴れとして青く澄んでいた。


そんな中、ボロボロになった住宅の軒先の階段に腰掛ける影がふたつ。
ワインローズ色の長い髪をふわりと揺らすオーガの娘、カイト。
赤色のバトルドレスと赤い腰巻きの魔法使いのズボンを穿き、快活そうなオーガの赤い肌を覗かせる。
腰には、使い込まれた聖王のツメが鈍い光を放っている。

カイトの膝には、弟のクウトが錬金術で作ったという、トンブレロのような姿をしたハナが乗っている。
ラゼアの風穴の研究室から帰ってきたカイトは、髪と同じ紫色の瞳を輝かせ、離れてしまった弟・クウトのことを尋ねていた。

「クウトさんは、ボクをたくさん可愛がってくれたプッケ!」

久々に人と話すのが嬉しいのだろう、ハナは楽しそうに主人の話をする。
無愛想に見えて、よく世話を焼いてくれたクウトのこと。
研究室であった様々な出来事。
手のかかる姉がいたと、よく聞かされていたこと。

『しょうがないな、姉ちゃんは』

いつも言われていた言葉が、カイトの頭を過る。
マセて生意気だったが、器用な弟は常にカイトの助けになっていた。

「クウトめ…手がかかったのはどっちよ」

しかしクウトが面倒事を起こせば、責任を取るのは姉の役目だった。
カイトは文句を言いながら、ハナの毛並みを撫でた。
姉弟二人で暮らしていた頃は、いつもケンカばかりしていた。
それでも、ドタバタと騒ぎながらもお互いのことを思いやって、楽しく過ごしていた。

カイトは昔のことを思い出し、ふふ、と笑った。
たくさん怒った出来事も、今となっては笑い話だ。

そんなカイトを見て、ハナは楽しそうにクウトから聞いた話を続ける。

「料理は、おねーちゃん、させたらダメ」


ピクリ、と。微笑みながら話を聞いていた、カイトの眉が痙攣した。
一瞬の、間。

「あのバカクウトー!」

かつて騒いではアバさまに叱られていた姉弟ゲンカの声が、誰もいない村に響き渡った。






「それにしてもクウトの奴、こんなに可愛いぶたさんを作るなんて!
錬金なんて失敗ばっかりしてたくせにさー」

カイトはハナの話にひとしきり怒ったり笑ったりした後、しみじみと話し出す。

「あーんな生意気なバカクウトが、あたしの知らない間に成長したっていうのかな。
…む、なんか悔しい」

カイトは唇を尖らせて不満を漏らす。
しかしその口調は冗談っぽく、顔は笑ったままだった。

「でもさー、あなたが居るってことは、クウトが確かにここに居たってことなんだよね」

カイトは手を伸ばし、ハナの帽子を触った。
そこに付いているのは、どこか見覚えのあるニッコリマークの花飾り。
カイトは目を細めた。

「…きっと、会えるよね」


そう小さく呟いたかと思うと、カイトは突然立ち上がった。
ハナは床へと転げ落ちる。

「な、何するプケ?!ビックリしたじゃ…」

ハナが文句を言おうとして立ち上がって顔を上げると、頭上のカイトは唇を噛んで真っ直ぐ前を見ていた。
目線の先には、かつて姉弟で暮らしていた、変わり果てた村の姿。

「やっとここまで辿り着いたのに。
村はこんなになっちゃって、クウトにも会えないしさ」

カイトは拳を強く握りしめる。その手はわなわなと震えていた。

「許さない。マデ…サ、マサゴ?なんだっけ?」

真剣な顔をしながら、ん?と首をかしげる。
マ…ゴ…?とぶつぶつ繰り返した後、「…まあ、どっちでもいっか」と、名前を思い出すのは潔く諦めたようだ。


目を瞑って、すぅっと息を吸った。
そして目をキッと見開くと、空を見上げ、口に両手を添えて叫んだ。

「だいまおーう!待ってなさーい!!
絶対、ぜぇぇぇったいに、倒してやるんだからー!!!」

そう言い終えると、カイトはよし、と頷いて、竜笛を取り出した。

「ユアンおいでー!」

飛竜の名前を呼び笛を吹き鳴らすと、金色の子供の竜が飛んできて、上空をくるりと旋回した後、村へと降りてきた。
カイトはさっとその背中に飛び乗った。
一連のカイトの行動にぽかんとしていたハナが、ひとり取り残された。


「そうだプッケちゃん、今度クウトの作った帽子を持ってくるね。
ふざけた帽子なんだけどさ、きっと気に入ると思うから」

カイトはハナの帽子に目をやり、ニッコリと笑いかけた。
ユアンに合図を送ると、大きく翼を広げて力強く羽ばたいた。
周囲は風に包まれ、砂埃が巻き上がる。


「ま、待て!『プッケ』ちがう、『ハナ』だプッケ!」

カイトを見てしばらく固まっていたハナがハッとして、慌てて大声を上げる。
どうも主人のお姉さんは、ハナの名前を間違って覚えていたようだ。

ハナの叫びはむなしく、竜の羽ばたきにかき消された。
ゴオオッと爆音を立て、ユアンは空へと飛び立った。






上昇しながら、カイトは不思議な出来事を思い返していた。
夢だと思った、能天気なニッコリ顔のごきげんな帽子を受け取った、あの時。
クウトは「今までありがとう」と言った。

バッカじゃないの。
カイトは思う。

まるで最後の別れみたいな言い方。
そんなわけ、ない。

「迷惑かけたね、じゃないわよ。これからもかけるんでしょうが」

今だって、あんたを探して迷惑してんのよ。
さっさとあたしの前に出てきて、殴らせなさいよ。
そのあと、抱きしめてやるから。

そんなことを考えていると、ざわつく思いが溢れてきそうだった。
カイトはぐっと堪え、バカクウト、とぼやいた。

クウトの残した汚い字の手紙でも読み返してやろう、と鞄を漁ると、中から白く輝く一輪のテンスの花が出てきた。

「あれ、これって…カメさまに捧げるんだっけ?」


そんなカイトの疑問に、かなりの速度で滑空するユアンが、グォ?と返した。








「クウトさん、聞いてた通りのおねーちゃんだったプッケ…」

ユアンの姿が空に消えて見えなくなると、ハナは呆然としながら独り呟いた。

「でもクウトさんの言う通り、おねーちゃんも、また会える、信じてた」

ハナは目を瞑り、主人の顔を思い浮かべる。無造作に跳ねる短く白い髪。
丸っぽい紫の瞳に、少し幼さの残る顔つき。
大好きなクウトを思い出して、ハナは顔を綻ばせる。


「きっと、会えるプッケ」

カイトが飛んでいった方角を見上げると、クウトの瞳と同じ色、夜に差し掛かる紫の空が広がっていた。



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≪セカルside≫

陽が沈みかけ、辺りが静寂に包まれる中。
人気のないエテーネの村に歩んでくる、ひとつの人影があった。

「おにーちゃん!」

村で暮らす唯一のいきもの、天才錬金術師と謳われたタキが作った、ハナがその人物を出迎えた。

整ったあさぎ色の短い髪、少し褐色掛かった肌に、金色の瞳の少年…青年に差し掛かる年齢だろうか。
無法者のベストとワイルドボトムを身につけ、腰にはポイズンスケイルを差していた。


「…おにーちゃん?セカルさん?」

ハナは首をかしげる。
以前見た、長い黒髪のウェディの青年ではなかったからだ。
魔法の力で、同じセカルであることは認識できるようだ。

「ああ、ハナ。ただいま」

セカルはハナに微笑みかける。
妹のタキが作ったテンスの花でペガサスを復活させ、グランゼドーラ城のアンルシア姫の元へ飛んで行くのを見届けて帰ってきたのだった。

必要な駒は揃い、最終決戦は目前。
しかし戦いに臨む前に、セカルは村へ立ち寄った。
しゃがんでハナを撫でた後、目を細めて荒れ果てたままの村を見渡した。

「この場所には…改めて、人間の姿で来ないといけないと思ってな」

今では滅多に見せないエテーネの姿で、噛み締めるように呟いた。




ハナはいつも居る住宅の前で、上機嫌にタキのことを語り始めた。
セカルはハナの隣に座り、穏やかな顔で話を聞いていた。

自分と離れた後の、大切な妹の軌跡を知るハナの存在はありがたかった。
タキと暮らしていた時のこと、タキから聞かされた話など、ハナが短く発する単語のひとつひとつに、セカルは静かに耳を傾けた。

ハナの話の途中に、セカルがふと顔を上げると、今にも崩れそうな民家が目に入った。
かつて兄妹で住んでいた家だった。

早くに両親を亡くし、歳の離れた妹を、セカルは親代わりとなって育ててきた。
幸せに暮らしていた時のことを思い出す。
金色に透き通る瞳がわずかに揺れた。

「タキさんは、おにーちゃんのこと、大好きプッケ!」

タキはハナに、たくさんのセカルの話を聞かせていた。
中にはセカルも忘れかけていたような小さなエピソードまで。

ハナの口から出る数々の話を聞きながら、セカルは右手で顔を覆った。

「おにーちゃん、泣いてるプケ?」

気付いたハナが話をやめ、不思議そうにセカルの顔を覗き込む。

「…いや、大丈夫だ」

セカルはそう答えたものの、顔を上げることができなかった。



優しく真っ直ぐに育ったタキは、セカルの言うことを何でも聞いて、いつも明るい返事を返した。
『おにいちゃん』と呼んでは、ニコニコしてついてきたタキの姿が、セカルの脳裏に焼きついている。

と同時に、最後に見たタキの顔がフラッシュバックした。
村が魔物の軍勢に襲撃を受けたあの喧騒の中でも、タキの叫んだ『おにいちゃん』という言葉はセカルの耳に届いていた。

意図せず使った時渡りの術で、消えていった妹の姿。
泣きそうなタキの顔。

伸ばした手は、届かなかった。



―もし、タキが無事だったとして。オレは生きて会えるのだろうか。
セカルは自分に問いかける。

ラゼアの風穴の研究室で読んだ書物。
時渡りの術者に起こる副作用とは何なのか。

キリッと引き締まったアンルシアの顔を思い出す。
迫り来る大魔王との決戦。
果たして勝利して戻って来られるのだろうか。

脳裏にちらつく最悪なイメージが、ひとつ、またひとつ。浮かんでは消えていった。

「…タキには、悪いことをしたな。
オレが過去に飛ばさなければ、こんな苦労をかけずに済んだのに」

マザー・リオーネやイッショウ、ハナの話を聞いて、タキがどれだけ厳しい運命を辿ることになったか、セカルは思い知った。
今でも各地を逃げ回っているのだろう。

「それに、お互い無事に会えるかどうか。
もう望み…は、」

そこまで言って、セカルは言葉を飲み込んだ。
望みは…薄いかもしれない、と。



「おにーちゃん!聞け!」
辺りの静寂を破る突然の大声に、セカルはビクリと体を震わせた。
驚いて目を向けると、ハナがセカルの足に前足をかけ、勢いよく喋り出した。

「タキさんは、おにーちゃんにいっぱい面倒見てもらった、よく言ってた。
そのおにーちゃんが、困ってる、助けなきゃ。そうやって、何十年も後にやってくる、セカルさんのことを思って、ずっと、ずっと、研究室で、ひとりで戦ってた!」

ハナは興奮気味に、セカルの足をガンガンと叩く。
研究室で時折見た、タキの寂しそうな顔。
あの表情を、ハナにはどうすることも出来なかった。

「タキさん強かった!ボクに弱音、吐かなかった!そ
れと、タキさん言ってた、おにーちゃん、もっと強い!」

セカルは目を見開いて、妹が作ったハナを見つめた。

「おとーさんおかーさんいなくても、絶対弱音吐かなかった!
辛くても、笑って、タキさんのこと、ひとりで守ってた!」

セカルの目に浮かぶ、8歳も下の小さな妹の姿。
ピンク色の長い髪をポニーテールで束ねて、真っ白な肌をしていて、真っ赤な瞳が煌めく。
ずっと守り続けなければいけないと思っていた妹に、セカルは助けられた。

タキが書き残した手紙を思い出す。
その文章のタキは、自分に与えられた運命を理解し、自らの使命を果たすように努力していた。

もう昔の、セカルが守っていた頃のタキではなかった。


「おにーちゃん、ヒーローだった!タキさん信じてた!」

セカルは当初、エテーネの村を滅ぼされたのは自分が無力だったせいだと責めていた。
生き返しを受けて尚、うじうじとしてジュレットに篭っていた頃を思い出す。
情けない姿を思い返し、少し自嘲した。

手を見つめると、無数の傷痕やマメがある。
旅立ってから、たくさんの死闘を潜り抜けてきた。
弱かった頃の自分とは、とっくに決別したはずだ。
親指で目頭を拭う。

こんなところで悩んでいる場合ではない。妹を失望させてしまう。
自分はいつまで経っても、妹のヒーローであり続けなければならない。
親を亡くした時に決めたのだ、タキの前では泣かないと。
タキと離れてしまって、そんなことも忘れたのか、とセカルは自嘲気味に笑った。

器の、ウェディの体の元の持ち主の、意地の悪い笑い方が、多少うつってしまったかもしれない。
やれやれと、セカルはさらに口角を上げた。


「ハナ、ありがとう。タキのことを大事に思ってくれて。
兄のオレが、妹に助けられてばっかじゃいけねぇな」

守られてきたのは、タキより自分の方かもしれない。
タキの存在があったから、兄として奮い立っていられた。
そう思いながら、セカルはポンポンとハナの頭を撫でた。

「おにーちゃん、ボクも、信じる」

ハナはセカルを見て納得した様子で、静かになって座り込んだ。

「今度はオレの番だ。タキが繋いでくれた意志を、継いでくる」

空を仰ぐと、真っ黒な夜空に星が輝いていた。
かつて村で見た、紫の雲に包まれた空。
ネルゲルに襲われたあの日のことは、決して忘れない。

セカルは拳を握り締めて立ち上がった。


「村を頼んだ。必ず、帰ってくるから」

シンイが言っていた、いつか三人でまた笑って会えるように。
ずっと見てきたタキのとびきりの笑顔を、ハナに届けるためにも。



目指すは魔幻宮殿。セカルは金の瞳に光を宿して、振り返らずに歩き出した。



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