うちのこ男子ズを会話させてみた。
【2016.5.8】
最初に言っておきます。オールキャラパラレルギャグです。
うちのこ男子ズを会話させてみた。
ちょっと質問を与えて、部屋に詰め込んでみました。
そもそも器セカル&ミユーツや、器セカル&クウトは同じ世界軸に存在しないので、もしも顔を合わせたらな話です。
会話させてみて明確になりましたが、どいつもこいつも仲良くないです。何てこった。
↓
↓
↓
「誰がイケメンか、だとぉ?」
長い黒髪を編み込み、後ろで束ねたウェディの青年、器セカルがかったるそうな声を上げる。
正直質問は何でも良かった。みんなで会話してほしかっただけなんだ。
「議題と書かれています。そのようですね」
静かな声で答えたのは、青紫の髪を襟足まできっちりと整えた、ウェディのプライベートコンシェルジュ、ミユーツ。
落ち着いた雰囲気で、器セカルよりも年齢は上に見える。実は唯一の三十路越え。
どこにあったのか、『議題』と書かれた紙を持って、しげしげと眺めている。
そんなに真剣に見ないで。思いつきで始めた話だから。
「まずはお前らが同時に存在してるっていうこの状況に、ツッコまないといけないんだろうな…」
げんなりした顔で呟いたのは、青い短髪のエテーネの少年、魂セカル。
ご名答。各世界軸で全員と顔見知りなのはあなただけです。
「っていうかさ、おれがここにいる意味が分かんない」
これまた不機嫌そうなのは、硬めの短い金髪がところどころ跳ねている、幼い顔付きのエルフのクウト。
巻き込んですまんかった。
「私達がここに集められた理由は分かりませんが。どうやら、質問に答えなければここから出られないようですね」
ミユーツが周りの三人に目配せしながら言う。
四人は殺風景な小さな部屋の中で、丸いテーブルを囲んで座っていた。
魂セカルと魂クウトが向かい合う形で、魂セカルの左隣に器セカル、右隣にミユーツがいる。
「この四人の中で、誰がイケメンか決めるってこと?」
クウトが足をぶらぶらと浮かせながら聞く。
「なら話が早いな。俺に決まってんだろ」
器セカルは足を組んで腕組みをし、自信ありげに他の三人を見渡す。
「もうそういうことにしていい。面倒だ」
心底興味のなさそうな目で、魂セカルが答えた。
「おや、そういうわけにはいきませんよ。エテーネのセカル君も、中々のイケメンだと思いますからね」
話題を終わらせようとしたところに、ミユーツが微笑みながら口を挟んだ。
この男、掻き乱してくる。
「はあ?」と魂セカルが声を上げる。
「話になんねぇな!俺とチビを比べてみろよ。どっちがイイ男かなんてすぐ分かんだろ」
ハッ!と器セカルが笑い飛ばした。
魂セカルが若干むっとする。
「まー、本当のイケメンなら、自分じゃ言わないと思うけどね」
そっぽを向きながら、クウトがぼやいた。
魂カイト譲りの器セカル叩きである。
「クソガキのチビ弟、てめぇも言うじゃねーか?」
「分かりにくいよ、その呼び方」
意地の悪い笑みを浮かべながら刺すような視線を向ける器セカルに対して、クウトは物怖じせず見上げる。
「ウェディのセカル君の見た目が良いのは肯定しますがね。内面はやはりエテーネのセカル君でしょう。ウェディの器の体に入った魂のセカル君、二人を合わせてイケメン、ということになりませんかね」
ふふ、と笑いながらミユーツが提案した。笑いながら爆弾をしかけてくる男である。
今度は器セカルがむっとした。
「ああ?俺の性格が不服だってのか?」
「ウェディのセカル君のタイプは万人向けではありませんからね。一部には人気がありそうですけど」
ミユーツは表情を変えずにさらりと言う。
「それはあの、あれ…SとかMとかいうやつ?」
クウトが尋ねた。まさか君の口から出るとは。
「この中でMなのってチビだけだろ」
「待てよ」
器セカルの言葉に、聞き手に回っていた魂セカルが間髪入れずに突っ込んだ。
でも、間違いなく魂セカルはSではないと思うよ。
「ま、俺とスカしたプラコン野郎はドSってとこか?ガキの弟もSっ気ありそうだしな」
ニヤリと器セカルが口角を上げた。
『ド』をつける自覚はあるらしい。
「貴方と一緒にされるのは御免被りたいですがね」
「ハッ!猫被りやがって。さっさと本性現したらどうだぁ?」
ニコニコしながら毒づくミユーツに、ニヤニヤ笑いながら睨む器セカル。
どす黒い渦が見えるようだ。この戦いには巻き込まれたくない。
そんな二人を、冷めた様子で見やる魂セカルとクウト。
「どうでもいいけどさ…。セカルがMってのは同意」
「お前も何言ってんだよ」
クウトにも散々な言われ様で、魂セカルの目は虚ろだった。
「あーもうとにかく!誰がイケメンか決めないと、この場所から出られないんだろ?さっさと決着つけるぞ!」
痺れを切らした魂セカルが、両手でバンッと机を叩いた。
いつも通りの苦労人である。知ってた。
「まずクロ!お前はその性格の悪い笑い方をやめて、黙ってたらイケメンでも通るだろうに」
「んなもん俺じゃなくなるだろうが」
魂セカルの言葉に、器セカルはだるそうに文句を垂れた。
言ってることは正論である。アイデンティティの消失。
「そしてミユーツ!お前は他の奴を推して、我関せずな姿勢なのが気に食わん。自分だって候補なんだぞ」
「それは、名誉な肩書きを若い皆さんに譲りたいからですよ」
ミユーツは紳士的な微笑みを崩さずに返答した。
食えない男である。真意が読めない。
「最後にクウト!」
「おれ?何も言われることないだろ」
魂セカルに呼ばれ、クウトは眉をひそめる。
「正直…この魚共をまとめるのが無理だから、助けてほしい」
「本音が出たね」
うなだれる魂セカルに、クウトは哀れみの目を向けた。
同情しかない。
「ふっふっふ…話は聞かせてもらったよ」
不意に、四人のものとは違う声が部屋の中に響いた。
「誰?」
クウトが周りをきょろきょろと見渡すと、ガンッと音を立てて机が動いた。
「…何か、居るなこれ」
器セカルが半目でぼやき、組んでいた足を動かすと、何かに当たった。
げしげしと蹴ると、やめてっやめてっ!と悲痛な声が聞こえた。
「頭…打った……」
第五の声の主が、力なく机の下から這い出てきた。
ツンツンした緑の髪を束ねた点目のプクリポ、リクトだった。
頭を抱えながらもスクッと体を起こして、よじよじと机に登った。
書く予定なかったのに勝手に登場してきたよ。ビックリだよ。
「誰がイケメンか決めかねてるようだね。そこで揉めるなら、このリクト様が名乗りを上げようじゃないか!」
胸を張り、陽気に牙を見せて笑ってみせる。
目は輝いているかもしれない。小さいので分からない。
「…兄ちゃん」
今まで動じなかったクウトが、明らかに顔を歪めている。
恥ずかしいんだろうなと、今度は魂セカルが哀れみの目を向けていた。
「ホントは『可愛い』の称号が欲しいけどさ。みんな困ってるから仕方ないね。イケメンの称号は俺が貰うよ!」
「ふむ。この自信は、誰かさんと似ているような違うような」
「あーん?何か言ったか?」
嬉々と宣言するリクト、首を傾げるミユーツ、笑いながら睨む器セカル。
この三人、実はどの世界軸でも顔を合わせることがない。レアな集まり。
「ああ、カイト様に似ているのですね。やはり兄妹です」
思い当たったように、ぽん、とミユーツが手を叩いた。
自分のことだと思って肩透かしを食らった器セカルは、目線を逸らした。
いや、でもノリは似てるよ。器セカルもカイトもリクトも。
「もう…ほんとここから出たい」
カイトとリクトの弟、クウトが人知れず大ダメージを受けていた。
悲しいかな、末っ子が一番しっかり者である。
「…最悪なことに、候補が五人に増えたわけだが」
沈痛な面持ちで、魂セカルが口を開いたが、
「もう誰でもいい」
投げやりになっていた。気持ちは分かる。
「じゃあ多数決で」
一刻も早く出たいクウトも、投げやりに提案した。
「そうだ。どうせなら、女性票で決めませんか?」
そこにミユーツが便乗する。
「この男性陣の中で投票するのは何ですからね。女性陣が誰に投票するか、で考えてみましょうか。その方が、真のイケメンといえるでしょうしね」
「それなら俺で決まりだろ。オーガのカイトとリンセが俺に入れて、二票だ」
勝ち誇ったように、器セカルが名乗りを上げる。
二人から支持を得られる自信があるらしい。
ただし支持されるのは、ストーリー上結構後の話だぞ。
「いや…それなら、エテーネのカイトとタキで、オレも二票だ」
魂セカルが呟いた。
カイトのことは、照れがあるのか言いにくそうに口ごもった。ヘーターレ。
「タキは…うーん、やっぱりセカルに入れるかな…」
少々残念そうに、クウトが頭を下げる。
兄セカルにはまだ勝てそうにないか。
「おや?サキノもエテーネのセカル君に入れるのではないでしょうか」
閃いたように、ミユーツが指さした。
あれっ伏兵?
「俺は?!ゼロ票?!!」
リクトが驚いた声を上げた。
ゼロでしょうね。
「おめでとうございます。エテーネのセカル君で決まりでしょう」
にっこりと笑ったミユーツが、パチパチと手を叩く。
「納得いかねぇ!プラコン、てめえ図って提案しただろ?!」
机を右拳で叩き、器セカルが食らい付いた。
イケメンには選ばれたかったんだな。可愛気があるのか自信家なのか。
「いやあ、サキノが私に入れるかとも考えたのですがね。彼女は意固地になりますから、やはり主人であるエテーネのセカル君に入れるだろうと結論付けただけですよ」
「さらっとノロけてんじゃねぇよ!」
サキノの情報を加えてすらすら喋るミユーツに、荒れる器セカル。
焚き付け煽り合い。会話させて分かった、この二人の絡みは怖い。
「ねえ!ねえ!カイトがさあ、俺に入れる可能性ないかなあ?!兄を立てないかなあ?!」
ゼロ票だと知ってショックを受けるリクトが、クウトに泣きつく。
「知らないよ!兄ちゃんに入れるくらいなら、おれに入れてほしいくらいだよ!」
「なんでー!?クウトまで冷たいよ~兄ちゃん悲しいよぉぉ」
しがみつく困った兄を、振り払おうと必死なクウト。
歳の差は十三ある。悲しいかな。
「もう、イケメンはオレでいいから…ここから出してくれ…」
ワーワーと騒ぐ四人を見やり、魂セカルが頭を抱えた。
まだ、元の世界には帰れそうにない。
頑張れ。
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最初に言っておきます。オールキャラパラレルギャグです。
うちのこ男子ズを会話させてみた。
ちょっと質問を与えて、部屋に詰め込んでみました。
そもそも器セカル&ミユーツや、器セカル&クウトは同じ世界軸に存在しないので、もしも顔を合わせたらな話です。
会話させてみて明確になりましたが、どいつもこいつも仲良くないです。何てこった。
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「誰がイケメンか、だとぉ?」
長い黒髪を編み込み、後ろで束ねたウェディの青年、器セカルがかったるそうな声を上げる。
正直質問は何でも良かった。みんなで会話してほしかっただけなんだ。
「議題と書かれています。そのようですね」
静かな声で答えたのは、青紫の髪を襟足まできっちりと整えた、ウェディのプライベートコンシェルジュ、ミユーツ。
落ち着いた雰囲気で、器セカルよりも年齢は上に見える。実は唯一の三十路越え。
どこにあったのか、『議題』と書かれた紙を持って、しげしげと眺めている。
そんなに真剣に見ないで。思いつきで始めた話だから。
「まずはお前らが同時に存在してるっていうこの状況に、ツッコまないといけないんだろうな…」
げんなりした顔で呟いたのは、青い短髪のエテーネの少年、魂セカル。
ご名答。各世界軸で全員と顔見知りなのはあなただけです。
「っていうかさ、おれがここにいる意味が分かんない」
これまた不機嫌そうなのは、硬めの短い金髪がところどころ跳ねている、幼い顔付きのエルフのクウト。
巻き込んですまんかった。
「私達がここに集められた理由は分かりませんが。どうやら、質問に答えなければここから出られないようですね」
ミユーツが周りの三人に目配せしながら言う。
四人は殺風景な小さな部屋の中で、丸いテーブルを囲んで座っていた。
魂セカルと魂クウトが向かい合う形で、魂セカルの左隣に器セカル、右隣にミユーツがいる。
「この四人の中で、誰がイケメンか決めるってこと?」
クウトが足をぶらぶらと浮かせながら聞く。
「なら話が早いな。俺に決まってんだろ」
器セカルは足を組んで腕組みをし、自信ありげに他の三人を見渡す。
「もうそういうことにしていい。面倒だ」
心底興味のなさそうな目で、魂セカルが答えた。
「おや、そういうわけにはいきませんよ。エテーネのセカル君も、中々のイケメンだと思いますからね」
話題を終わらせようとしたところに、ミユーツが微笑みながら口を挟んだ。
この男、掻き乱してくる。
「はあ?」と魂セカルが声を上げる。
「話になんねぇな!俺とチビを比べてみろよ。どっちがイイ男かなんてすぐ分かんだろ」
ハッ!と器セカルが笑い飛ばした。
魂セカルが若干むっとする。
「まー、本当のイケメンなら、自分じゃ言わないと思うけどね」
そっぽを向きながら、クウトがぼやいた。
魂カイト譲りの器セカル叩きである。
「クソガキのチビ弟、てめぇも言うじゃねーか?」
「分かりにくいよ、その呼び方」
意地の悪い笑みを浮かべながら刺すような視線を向ける器セカルに対して、クウトは物怖じせず見上げる。
「ウェディのセカル君の見た目が良いのは肯定しますがね。内面はやはりエテーネのセカル君でしょう。ウェディの器の体に入った魂のセカル君、二人を合わせてイケメン、ということになりませんかね」
ふふ、と笑いながらミユーツが提案した。笑いながら爆弾をしかけてくる男である。
今度は器セカルがむっとした。
「ああ?俺の性格が不服だってのか?」
「ウェディのセカル君のタイプは万人向けではありませんからね。一部には人気がありそうですけど」
ミユーツは表情を変えずにさらりと言う。
「それはあの、あれ…SとかMとかいうやつ?」
クウトが尋ねた。まさか君の口から出るとは。
「この中でMなのってチビだけだろ」
「待てよ」
器セカルの言葉に、聞き手に回っていた魂セカルが間髪入れずに突っ込んだ。
でも、間違いなく魂セカルはSではないと思うよ。
「ま、俺とスカしたプラコン野郎はドSってとこか?ガキの弟もSっ気ありそうだしな」
ニヤリと器セカルが口角を上げた。
『ド』をつける自覚はあるらしい。
「貴方と一緒にされるのは御免被りたいですがね」
「ハッ!猫被りやがって。さっさと本性現したらどうだぁ?」
ニコニコしながら毒づくミユーツに、ニヤニヤ笑いながら睨む器セカル。
どす黒い渦が見えるようだ。この戦いには巻き込まれたくない。
そんな二人を、冷めた様子で見やる魂セカルとクウト。
「どうでもいいけどさ…。セカルがMってのは同意」
「お前も何言ってんだよ」
クウトにも散々な言われ様で、魂セカルの目は虚ろだった。
「あーもうとにかく!誰がイケメンか決めないと、この場所から出られないんだろ?さっさと決着つけるぞ!」
痺れを切らした魂セカルが、両手でバンッと机を叩いた。
いつも通りの苦労人である。知ってた。
「まずクロ!お前はその性格の悪い笑い方をやめて、黙ってたらイケメンでも通るだろうに」
「んなもん俺じゃなくなるだろうが」
魂セカルの言葉に、器セカルはだるそうに文句を垂れた。
言ってることは正論である。アイデンティティの消失。
「そしてミユーツ!お前は他の奴を推して、我関せずな姿勢なのが気に食わん。自分だって候補なんだぞ」
「それは、名誉な肩書きを若い皆さんに譲りたいからですよ」
ミユーツは紳士的な微笑みを崩さずに返答した。
食えない男である。真意が読めない。
「最後にクウト!」
「おれ?何も言われることないだろ」
魂セカルに呼ばれ、クウトは眉をひそめる。
「正直…この魚共をまとめるのが無理だから、助けてほしい」
「本音が出たね」
うなだれる魂セカルに、クウトは哀れみの目を向けた。
同情しかない。
「ふっふっふ…話は聞かせてもらったよ」
不意に、四人のものとは違う声が部屋の中に響いた。
「誰?」
クウトが周りをきょろきょろと見渡すと、ガンッと音を立てて机が動いた。
「…何か、居るなこれ」
器セカルが半目でぼやき、組んでいた足を動かすと、何かに当たった。
げしげしと蹴ると、やめてっやめてっ!と悲痛な声が聞こえた。
「頭…打った……」
第五の声の主が、力なく机の下から這い出てきた。
ツンツンした緑の髪を束ねた点目のプクリポ、リクトだった。
頭を抱えながらもスクッと体を起こして、よじよじと机に登った。
書く予定なかったのに勝手に登場してきたよ。ビックリだよ。
「誰がイケメンか決めかねてるようだね。そこで揉めるなら、このリクト様が名乗りを上げようじゃないか!」
胸を張り、陽気に牙を見せて笑ってみせる。
目は輝いているかもしれない。小さいので分からない。
「…兄ちゃん」
今まで動じなかったクウトが、明らかに顔を歪めている。
恥ずかしいんだろうなと、今度は魂セカルが哀れみの目を向けていた。
「ホントは『可愛い』の称号が欲しいけどさ。みんな困ってるから仕方ないね。イケメンの称号は俺が貰うよ!」
「ふむ。この自信は、誰かさんと似ているような違うような」
「あーん?何か言ったか?」
嬉々と宣言するリクト、首を傾げるミユーツ、笑いながら睨む器セカル。
この三人、実はどの世界軸でも顔を合わせることがない。レアな集まり。
「ああ、カイト様に似ているのですね。やはり兄妹です」
思い当たったように、ぽん、とミユーツが手を叩いた。
自分のことだと思って肩透かしを食らった器セカルは、目線を逸らした。
いや、でもノリは似てるよ。器セカルもカイトもリクトも。
「もう…ほんとここから出たい」
カイトとリクトの弟、クウトが人知れず大ダメージを受けていた。
悲しいかな、末っ子が一番しっかり者である。
「…最悪なことに、候補が五人に増えたわけだが」
沈痛な面持ちで、魂セカルが口を開いたが、
「もう誰でもいい」
投げやりになっていた。気持ちは分かる。
「じゃあ多数決で」
一刻も早く出たいクウトも、投げやりに提案した。
「そうだ。どうせなら、女性票で決めませんか?」
そこにミユーツが便乗する。
「この男性陣の中で投票するのは何ですからね。女性陣が誰に投票するか、で考えてみましょうか。その方が、真のイケメンといえるでしょうしね」
「それなら俺で決まりだろ。オーガのカイトとリンセが俺に入れて、二票だ」
勝ち誇ったように、器セカルが名乗りを上げる。
二人から支持を得られる自信があるらしい。
ただし支持されるのは、ストーリー上結構後の話だぞ。
「いや…それなら、エテーネのカイトとタキで、オレも二票だ」
魂セカルが呟いた。
カイトのことは、照れがあるのか言いにくそうに口ごもった。ヘーターレ。
「タキは…うーん、やっぱりセカルに入れるかな…」
少々残念そうに、クウトが頭を下げる。
兄セカルにはまだ勝てそうにないか。
「おや?サキノもエテーネのセカル君に入れるのではないでしょうか」
閃いたように、ミユーツが指さした。
あれっ伏兵?
「俺は?!ゼロ票?!!」
リクトが驚いた声を上げた。
ゼロでしょうね。
「おめでとうございます。エテーネのセカル君で決まりでしょう」
にっこりと笑ったミユーツが、パチパチと手を叩く。
「納得いかねぇ!プラコン、てめえ図って提案しただろ?!」
机を右拳で叩き、器セカルが食らい付いた。
イケメンには選ばれたかったんだな。可愛気があるのか自信家なのか。
「いやあ、サキノが私に入れるかとも考えたのですがね。彼女は意固地になりますから、やはり主人であるエテーネのセカル君に入れるだろうと結論付けただけですよ」
「さらっとノロけてんじゃねぇよ!」
サキノの情報を加えてすらすら喋るミユーツに、荒れる器セカル。
焚き付け煽り合い。会話させて分かった、この二人の絡みは怖い。
「ねえ!ねえ!カイトがさあ、俺に入れる可能性ないかなあ?!兄を立てないかなあ?!」
ゼロ票だと知ってショックを受けるリクトが、クウトに泣きつく。
「知らないよ!兄ちゃんに入れるくらいなら、おれに入れてほしいくらいだよ!」
「なんでー!?クウトまで冷たいよ~兄ちゃん悲しいよぉぉ」
しがみつく困った兄を、振り払おうと必死なクウト。
歳の差は十三ある。悲しいかな。
「もう、イケメンはオレでいいから…ここから出してくれ…」
ワーワーと騒ぐ四人を見やり、魂セカルが頭を抱えた。
まだ、元の世界には帰れそうにない。
頑張れ。
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