バージョン3.0 兄弟の話
【2016.3.21】
カイトとセカル、それぞれの兄弟の小話。
※バージョン3.0のネタバレを含みます。
ほぼ心情語り、ほぼ情景なし。
カイトとセカル、それぞれ別の次元です。
↓
↓
↓
≪カイトside≫
グランドタイタス号でのパーティが、悲劇となった。
各国の王族が集まるこの場で、しかも自分の目の前で、アンルシアとラグアス王子が拐われた。
誘拐犯が消えた後、港に着くまで部屋で待機を言い渡された。
この日のためにアンルシアが用意してくれたドレスを放るように脱ぎ、ベッドに伏して枕をぎゅっと掴む。
拐われた二人はどこへ行ってしまったのか。
それに、あの犯人の姿は…間違いなく、
「クウト…」
名前を口に出すと、堪えていた涙が浮かんだ。
あれは弟だった。見間違えるわけがない。
でも60年前の時代に飛んだんじゃなかったの?
その姿は、エテーネの村で一緒に暮らしていた時のままだった。
本当にあいつなの?
もしかして、弟は悪い奴に操られているんじゃ…
都合良く考えたところで、ふと、パーティの前に見た夢が頭を過った。
「あたしの、せいで…」
あたしのせいで、辛い思いをしたと。夢の中のクウトは言った。
あたしが時渡りの術を使わなければ、クウトはずっと一人で研究したり、悪者に狙われて逃亡生活をすることはなかった。
まさか、あたしへの復讐なの…?
枕に顔を押し付ける。
涙がじわりと布に染み込んだ。
「バカクウト…話、聞かせなさいよ」
やっとの思いで見つけた、弟らしき人物。
絶対に、また会って話をしないと。
頼むから…声を、聞かせて。
汽笛が響く。
船は間もなく港に着くようだった。
----------
≪セカルside≫
フードの男と、タキは仲間ではない。
エルトナの地で再び遭遇したフードの男は、妹に向かって盗人と言った。
つまり二人は仲間ではなく、相対する関係にある。
もしかすると、タキはフードの男を妨害するために、アンルシアとラグアス王子を…?
『お兄ちゃん、これ以上、神の器を追おうとはしないで』
タキは消える前にそう言った。
オレに、悲しげな表情を向けて。
追うなと言われても、あんな顔をする妹を放っておけるわけがない。
タキが自分の意思で、何かの目的のために二人を拐ったのは確かだ。
だが、あの切迫した表情を見るに、やむをえず誘拐したのであって、タキは決して、悪事のために動いているわけでは…
はぁ、とため息をついた。
憶測と願望に過ぎない。
可愛い妹が、オレと敵対するわけがないと信じたいだけだ。
「おかえりなさいませ、セカルさま」
久々に帰宅すると、オーガ女のコンシェルジュ・サキノさんが微笑んで迎え入れてくれた。
「最近は、また遠出が多くなりましたね」
サキノさんは穏やかに言いながら、お茶を注いでくれた。
アストルティアが平和になってからは、裁縫ギルドに通ったりして、たまに討伐に行くことはあってもそこまで長く家を空けることはなくなっていた。
「そう…だな。何だか、やることが多くてさ」
ヴェリナード、ドルワーム…各地を回って誘拐犯の行方を追っている。
自分が要人を守らなければという使命感のもと。
そして、妹の手がかりを探すために。
確めないといけない。タキは何のためにあんなことをしたのか。
タキから貰った手紙は、いつも鞄に入れている。
研究の末に残してくれたテンスの花、滅びたエテーネの村で待ち続けているブタのハナ、オレの手元にある錬金釜。
タキの活躍のおかげで、今のオレは生きている。
助けられっぱなしだ。
もしも今、タキが困っているのなら、今度はオレが助ける。
事件を全て終わらせて、妹とまた一緒に過ごせることを願って。
貰ったお茶を飲み干し、カップを机に置いた。
「すみません。またしばらく、家を空けます」
オレの言葉に、サキノさんは静かに頷いた。
「ええ、お帰りをお待ちしています。でも今日くらいは、ゆっくり休んでいってくださいね」
顔に疲れが出ていたのか、そう言われてぐうの音も出ない。
もごもごと「はい」と答えると、サキノさんはふふ、と微笑んだ。
翌日にランガーオへ発ってから、竜族の隠れ里、奈落の門へと絶え間なく駆け回った。
アンテロとの激戦の末、そのままナドラガンドへ旅立ち、家に帰ることはなかった。
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カイトとセカル、それぞれの兄弟の小話。
※バージョン3.0のネタバレを含みます。
ほぼ心情語り、ほぼ情景なし。
カイトとセカル、それぞれ別の次元です。
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≪カイトside≫
グランドタイタス号でのパーティが、悲劇となった。
各国の王族が集まるこの場で、しかも自分の目の前で、アンルシアとラグアス王子が拐われた。
誘拐犯が消えた後、港に着くまで部屋で待機を言い渡された。
この日のためにアンルシアが用意してくれたドレスを放るように脱ぎ、ベッドに伏して枕をぎゅっと掴む。
拐われた二人はどこへ行ってしまったのか。
それに、あの犯人の姿は…間違いなく、
「クウト…」
名前を口に出すと、堪えていた涙が浮かんだ。
あれは弟だった。見間違えるわけがない。
でも60年前の時代に飛んだんじゃなかったの?
その姿は、エテーネの村で一緒に暮らしていた時のままだった。
本当にあいつなの?
もしかして、弟は悪い奴に操られているんじゃ…
都合良く考えたところで、ふと、パーティの前に見た夢が頭を過った。
「あたしの、せいで…」
あたしのせいで、辛い思いをしたと。夢の中のクウトは言った。
あたしが時渡りの術を使わなければ、クウトはずっと一人で研究したり、悪者に狙われて逃亡生活をすることはなかった。
まさか、あたしへの復讐なの…?
枕に顔を押し付ける。
涙がじわりと布に染み込んだ。
「バカクウト…話、聞かせなさいよ」
やっとの思いで見つけた、弟らしき人物。
絶対に、また会って話をしないと。
頼むから…声を、聞かせて。
汽笛が響く。
船は間もなく港に着くようだった。
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≪セカルside≫
フードの男と、タキは仲間ではない。
エルトナの地で再び遭遇したフードの男は、妹に向かって盗人と言った。
つまり二人は仲間ではなく、相対する関係にある。
もしかすると、タキはフードの男を妨害するために、アンルシアとラグアス王子を…?
『お兄ちゃん、これ以上、神の器を追おうとはしないで』
タキは消える前にそう言った。
オレに、悲しげな表情を向けて。
追うなと言われても、あんな顔をする妹を放っておけるわけがない。
タキが自分の意思で、何かの目的のために二人を拐ったのは確かだ。
だが、あの切迫した表情を見るに、やむをえず誘拐したのであって、タキは決して、悪事のために動いているわけでは…
はぁ、とため息をついた。
憶測と願望に過ぎない。
可愛い妹が、オレと敵対するわけがないと信じたいだけだ。
「おかえりなさいませ、セカルさま」
久々に帰宅すると、オーガ女のコンシェルジュ・サキノさんが微笑んで迎え入れてくれた。
「最近は、また遠出が多くなりましたね」
サキノさんは穏やかに言いながら、お茶を注いでくれた。
アストルティアが平和になってからは、裁縫ギルドに通ったりして、たまに討伐に行くことはあってもそこまで長く家を空けることはなくなっていた。
「そう…だな。何だか、やることが多くてさ」
ヴェリナード、ドルワーム…各地を回って誘拐犯の行方を追っている。
自分が要人を守らなければという使命感のもと。
そして、妹の手がかりを探すために。
確めないといけない。タキは何のためにあんなことをしたのか。
タキから貰った手紙は、いつも鞄に入れている。
研究の末に残してくれたテンスの花、滅びたエテーネの村で待ち続けているブタのハナ、オレの手元にある錬金釜。
タキの活躍のおかげで、今のオレは生きている。
助けられっぱなしだ。
もしも今、タキが困っているのなら、今度はオレが助ける。
事件を全て終わらせて、妹とまた一緒に過ごせることを願って。
貰ったお茶を飲み干し、カップを机に置いた。
「すみません。またしばらく、家を空けます」
オレの言葉に、サキノさんは静かに頷いた。
「ええ、お帰りをお待ちしています。でも今日くらいは、ゆっくり休んでいってくださいね」
顔に疲れが出ていたのか、そう言われてぐうの音も出ない。
もごもごと「はい」と答えると、サキノさんはふふ、と微笑んだ。
翌日にランガーオへ発ってから、竜族の隠れ里、奈落の門へと絶え間なく駆け回った。
アンテロとの激戦の末、そのままナドラガンドへ旅立ち、家に帰ることはなかった。
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