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道。 うちのこまとめページ

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1年目正月

【2022.11.24】
クウトが初めてセカル・タキ兄妹と会う話。
この頃のクウトは無自覚シスコン。

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(セカル高2、カイト高1、クウト中2、タキ小6で1月。クウト視点。)


最近、姉ちゃんが男と一緒にいる。

面食いな姉ちゃんのことだから「カッコいいー!」とかで惚れて、ついて回ってるんだろうな。
で、その内姉ちゃんが距離感間違えて、相手に引かれて終わりー…になると思ってたんだけど…

案外続いてる。
たまに二人で出掛けてるっぽい。
男にもその気があると見た。
あの姉ちゃんだぞ?人の話を聞かずに突っ走る。そのくせ不器用で、人にお世話されなきゃ何も出来ない。一緒にいたら、振り回されること間違いなし。
…それがいいって、相当な物好きだぞ。

あー、そういえば、この間クリスマスに出掛けていって、上機嫌で帰ってきてた。
見たことないネックレスつけて。
あれは多分貰ったプレゼントだな。

本気で姉ちゃんと付き合う気か?
どうせ手に負えなくて、投げ出すに決まってる。
別に姉ちゃんが誰と付き合おうと知ったことじゃないけど、中途半端に手を出されて泣かされても困る。
家でうだうだ泣かれるのが面倒ってだけだ!

…姉ちゃんにふさわしい男かどうか、おれが見極めてやる。




正月の朝9時。
朝から隣の部屋がドタバタとうるさい。

「ねー!あたしの手袋どこにあるか知らない?」

いきなりおれの部屋のドアが開いて、カイトが顔を出す。

「なんでおれに聞くの?自分でどっか置いたんでしょ。あとノックして」
「ないのよ~昨日使ったはずなんだけど…」

カイトが眉をハの字にする。
ノックのことは耳に入ってない。
おれはわざとらしくため息をついてやる。

「…昨日帰ってきて、手洗えって母ちゃんに言われて洗面所行ってたでしょ。そのルートにない?」
「あ、そっか!玄関か洗面所かなー」

カイトはドタドタと走って、階段を下りていった。

「ドア閉めてってよ!」

返事は返ってこなかった。
いつもこの調子だ!


仕方なくドアを閉めようと立ち上がると、隣の部屋から着信音が聞こえた。
カイトの部屋のドアは開きっぱなし。
中を覗き込むと、机の上に置いてあったスマホがバイブと共に鳴っていた。
部屋に入って画面を見ると、通知に『セカル』と書いてあった。

…あの男の名前だ。

用件は分かってる。今日はコイツと初詣に行くらしい。
付き合ってない男の先輩と正月から会うって、どうしたらそんな流れになるんだよ?

…なんて思ってたら、カイトが階段を上ってくる足音がした。
マズい!
慌てて部屋を飛び出した。

廊下に出ると、カイトが階段を上ってきた。

「あ、手袋あったよー」

カイトは手袋を見せながら、笑顔で報告してきた。

「だから言ったでしょ。大体姉ちゃんがどっか置いて忘れてるんだから」
「すみませんでしたー」

カイトは唇を尖らせながら、自分の部屋に入ろうとする。

「…どっか出掛けんの?」

おれが聞くと、カイトが振り返った。

「え?まあ…そう、友達!友達と初詣に行くの!」

カイトが一瞬迷ってから言った。
へー友達。へー。

内心そう思いながら、「あっそう」と返しておいた。



カイトが家を出たのを見て、おれもコートを着て支度する。

「あら、クウトも出掛けるの?」

母ちゃんに尋ねられる。

「うん。御札ちょうだい。神社に納めてくる」
「ああ!そうね、お願いしようかしら」

御札を受け取り、コートのポケットに入れて家を出た。

歩いていける範囲に、そこそこな大きさの神社がある。
近くまで行くと、正月の参拝客で賑わっていた。

その人混みの中に、頭1つ抜けて青い髪の男を見つけた。
隣にカイトがいるのを確認する。
おれは木の陰に隠れた。
少し距離を取って、様子を伺う。

カイトが手袋をした手で、頬を押さえる仕草をする。
寒い~とでも言ってんのかな。
ああ、嬉しそうな顔しやがって…。

男は後ろ向きで、背中しか見えない。
どんな顔で話してんだ?
この距離だと会話も聞こえない。
もう少し近付きたい…。


「あの、お兄ちゃんのお友達ですか?」

突然、背後から声が掛かった。
驚いて振り向くと、ピンク髪のポニーテールの背の低い少女がおれを見ていた。

「え?」
「さっきから、お兄ちゃんのこと見てるから。声を掛けようとしてるのかなって思ったんですけど…」

少女は目をパチパチさせた後、

「もしかして、クウトくん?」

首を傾げて、おれの名前を口にした。

「なんで…?おれの名前を?」

ビックリしていると、少女は顔を綻ばせる。

「やっぱり!そんな気がしたの。私もね、あの二人のお邪魔になるんじゃないかなって思って、ちょっと声掛けづらかったんだよね」

少女はそう言いながら、おれの手を引いた。

えっ?

何が起こったのか考える暇もなく、木の陰から前に引っ張り出された。

「お兄ちゃん、お姉ちゃん、おまたせ!」

少女が笑顔で声を掛けると、カイトとセカルがこちらを見た。

「クウト?何でこんな所に!?」

カイトの甲高い叫びが耳を突いた。



「私が学校のお友達を見つけたから、お話ししてる間、お兄ちゃん達に待っててもらってたの」

ピンク頭は聞いてもない説明をしてくれた。
何だ?何考えてんだコイツは?
ふわふわした雰囲気をまとって、ずっと微笑んでいる。

「クウト、あんたタキちゃんと知り合いなの?」

カイトが目を丸くして聞いてきた。
知るか。でも大体状況は掴めた。

「知らない。けどコイツはおれの名前知ってたから、どうせ姉ちゃんがおれのこと話してたんでしょ?」

「コラ!タキちゃんのことコイツ呼ばわりしないの!」

カイトが怒ってきた。セカルも眉を潜める。

「お姉ちゃん待って!クウトくんは悪くないよ。まだ自己紹介もしてないのに、私が連れ出しちゃったの」

タキと呼ばれた少女は、呼ばれ方を気にすることなくにこやかに微笑み掛けてきた。

「はじめまして。セカルお兄ちゃんの妹のタキです。6年生です。クウトくんのことは、カイトお姉ちゃんから聞いてました。仲良くしてくれると嬉しいな?」

…ふわふわした見た目に反して、かなりしっかりしてる。

「ほら、クウトも!返事!」

カイトがうるさい。

「…クウトです。このどうしようもない姉ちゃんのお世話してます」
「はあ?何言ってんの!?」

これまたカイトがうるさい。無視した。



「…聞いてた通りだな」

そこでようやくセカルが口を開いた。
初めておれと目が合った。
金の瞳。少し黒い肌。

ああ、顔は整ってる。面食いな姉ちゃんが惚れたわけだ。

「姉ちゃん、おれのこと何て説明してたの?」

セカルには声を掛けず、カイトに向き直った。

「生意気でうるさい弟がいるって」
「出来の悪い姉の面倒を甲斐甲斐しく見てる優しい弟、の間違いじゃない?」
「あんたねぇ~!?」

カイトが声を荒げると、セカルが制止した。

「こんな所で騒ぐな。この数分で、お前ら姉弟の関係性はよく分かった」

…分かった気になるな!
セカルを睨みつけたが、セカルはカイトを見ていておれの視線に気付かなかった。


「っていうかクウト、あんた何しに来たのよ?」

成り行きで4人で参拝の列に並んでいると、カイトが話しかけてきた。

「母ちゃんに御札納めてこいって言われたから」

ポケットから御札を出す。
もしも見つかった時のために、理由を話せるように持ってきたものだ。

「ふーん」

カイトは恐らく何とも思ってないような相槌を打つ。
…別に理由を用意する必要なかったな。

そんなことを思ってたら、隣のセカルが口を出してきた。

「カイトに頼めば良かったのにな?」
「あ!ホントだ。ママ、あたしに言えば持ってきたのに」
「…忘れてたんじゃない?」

おれが自主的に持ってきたとは言えないので、適当に返す。


この男、なんか突っかかるな…。
っていうかカイト呼びなのかよ。名字じゃなくて名前呼び捨て。
まあ、カイトちゃんとかカイトさんとか呼ばれるのも寒いけど、実際に呼び捨てされてるのを聞くと若干ムカつく。

この際だから、色々と話をさせて情報を引き出すか。
関係がどの程度進んでるのか、様子を見るチャンスだ。


「タキちゃん、さっきのお友達とは何話してたの?」

カイトがタキに話しかける。

「冬休みの宿題の話。日記があってね、何書くか聞いてたの」
「タキちゃんはどうするの?」
「私はね、クリスマスもお正月も、お姉ちゃんに遊んでもらえて嬉しいから、どっちを書こうか悩んでるの」

クリスマス?は、カイトがこの男に会ってたはずだ。妹にも会ってたのか。
…探りを入れてみるか。

「姉ちゃん、クリスマスは帰り遅かったよねー」
「え?そこまでじゃなかった気がするけど」

カイトがきょとんとする。

「ネックレスつけて、顔デレデレさせて嬉しそうに帰ってきてさー」
「そ、そんな顔してないし!」

カイトがムキになって否定してきた。
チラリとセカルを見る。
一瞬目が合ったが、すぐに逸らされた。

くそっ、あんまり反応がないな。
お前がプレゼントしたんだろうが。
内心喜んでるんじゃないのか?

「クリスマスはね、お姉ちゃんがおうちに遊びに来てくれたの」

タキがご丁寧に解説してくれた。
家に行ってたのか。へぇ…。

「ふーん。何してたの?」

乗っかって聞いてみる。

「一緒にケーキを作ったの」

意外な答えに、思わずカイトを見る。

「姉ちゃんがケーキ作り?料理出来ないド不器用が?」
「ちょっとクウト!」

おれの煽りに簡単に乗ってきたカイトが抗議すると、セカルが噴き出した。
おっ反応した?

「セカルも何笑ってんのよ!」
「いや…ホント酷かったなって思い出して…」

セカルが口元を手で押さえる。

「あんたが無理矢理やらせたからでしょ!」

笑うセカルにカイトが怒って、言い合いを始めた。


…なんだ?
なに痴話喧嘩してんだよ?


置いてきぼりの空気を感じてたら、隣にいたタキがクスクスと笑い出した。

「お姉ちゃん達、仲良しさんだよね」

小声で話しかけられた。

「は?ケンカしてるだろ。どの辺が仲良く見えるんだよ」

つっけんどんに言ってやったが、おれの不機嫌な雰囲気を感じ取ってないのか、タキは普通に会話を続ける。

「ケンカするほど仲が良いって言うじゃない?」
「言わない」
「そう?」

タキは不思議そうにおれの顔を眺めていた。
このピンク頭、なんかズレてて調子狂うな。



参拝を終えると、カイトが指をさした。

「ねえ、あそこでお菓子配ってる!」

ガキみたいにはしゃぐんだよな。
本当に昔から変わらない。

「タキ、一緒に行っておいで」
「うん!お姉ちゃん、行こう?」
「オッケー!行ってきまーす」

セカルに促されて、カイトとタキが人だかりに向かって歩いていった。
その後ろ姿を眺めてたら、セカルから声が掛かった。

「行かなくていいのか?」
「おれはガキじゃないから」
「そうか」

セカルはおれの方を見ずに苦笑いした。



男2人で残されて、会話がなくなる。
この膠着状態も何だし、思い切って直接仕掛けてみるか。

「で、姉ちゃんのどこが好きなの?」
「え?」

セカルがぎょっとした顔をしておれを見た。
へぇ。間の抜けた顔もするんじゃん。油断してたな。
おれは畳み掛ける。

「あのどうしようもない姉ちゃんの、どこがいいのかって聞いてんの」
「は…?」

こんな質問をされるなんて、全く予想してなかったって顔だ。
セカルは口を開いて何か言いかけるが、言葉が出てこない。

…勝ったな。

ちょっと優越感に浸って、ため息をついてみせる。

「朝は起きてこない。遅刻しそうになって毎朝ダッシュ。夜はソファで寝て、早く風呂入れって何度も怒られる。宿題やってなくて泣き付く。物をよく無くす。勝手に人のお菓子を食べる。それから…」

どうしようもないカイトの話をしたら幻滅するだろと思って、思い付くまま挙げていたら、セカルが遮った。

「…なるほど。この弟にしてあの姉あり、か」

セカルは深々と呟いた。

セカルの顔を見ると、ちょっと笑ってた。
なんだその表情は?

「カイトは『今までどうやって生きてきたんだ?』って思う部分があったけど、クウトくんが面倒見てたんだね。納得した。キミの役割に、オレがちょうど合致したのか…」

…この口ぶり。

カイトの手の掛かり具合は分かってるような言い方だ。
おれの役割にセカルが合致した?

つまり、面倒を見てるおれとセカルが重なって、似てる…?ってこと?
…なんだろうけど、背筋がぞわっとした。
コイツにクウトくんって呼ばれるの、すげー気持ち悪い!


「弟だから仲良くしようとか、取り込もうとか考えてる?ご生憎さま。おれ馴れ合うの嫌だから。くん付けで呼ばれるのも気持ち悪い」

そう言い放つと、セカルは露骨に顔を歪めた。

「…お前さあ、さっきから失礼だよな」

セカルはムッとした表情をする。
お、いいぞ。その顔だ。
さっさと本性見せろよ?

「別に?仲良くしたいと思ってないだけだよ」
「流石に初対面で傍若無人すぎるだろ。カイトからの前情報がなければドン引いてるぞ」
「姉ちゃんから何聞かされてたの?」
「姉を姉とも思ってない、生意気で口の減らない弟がいる」
「そりゃーあれが姉なんて、恥ずかしくてたまったもんじゃないからね。毎日毎日バカなことやってて、文句言いたくもなるよ」

おれが肩をすくめると、セカルは冷めた目線を向けた。

「すごいな、このノリで毎日ケンカしてるのか」
「まあ口じゃおれの圧勝だけどね?」
「『ああ言えばこう言う』とは、よく文句聞かされてた」
「ボキャブラリー少ないからねー姉ちゃんは。何とでも言い負かせるよ」
「それで、その得意な口論でオレともやり合うつもりか?」

セカルとバチッと視線が合った。

コイツ、頭の回転が早い。
普通に頭は良いと見た。
優等生タイプかと思ったけど、案外口は悪いな。

そういう所はおれと似てる…?
…いやいや、気持ち悪いってば!

そもそも、何だってこの男は姉ちゃんに気があるんだ?
バカな女が可愛く見えるタイプ?

あ、そういえば、どうして好きなのかって質問ははぐらかされたな。
もう一回仕掛けてみるか…と思ったところに、

「ただいまー!」

能天気な声が響いた。
間が悪い。




「じゃあタキちゃんまたね!」
「お姉ちゃん、また遊ぼうね!」

帰路の途中で別れることになり、女子2人がキャッキャと笑って手を振る。

「セカルもまた学校で!」
「ハイハイ」

カイトに言われて、セカルは少し俯いて笑った。
…なーんか余裕なの気に入らないな。
コイツの中じゃ、もう彼女か何かなのか?
姉ちゃんも、この男が好きなの丸分かりなんだよなー。

「クウトくんもまたね?」

タキがニッコリとおれの方を見た。
コイツは最後まで何考えてるのかよく分かんなかったな。

「クウト!返事!」

…だからカイトがうるさい。

「ハイハイ。またねー」

振り向かず、歩きながらひらひらと手を振ってやった。



「もー、ホント失礼なんだから!」

カイトと帰りながら説教される。

「何が?」
「全部よ全部!タキちゃんにあんな態度取るなんて、もう会わせないからね!」
「別に会わなくていいけど」
「セカルの妹はあんなに可愛くて天使なのに~!あたしの弟は何でこんなのなの~…」

それはこっちの台詞だ。
あの妹のこと相当気に入ってるのか。

「あのタキって子のこと好きなの?」
「そりゃもちろん!あたしもあんな妹が欲しい~」
「あいつと結婚すりゃ妹になるんじゃない?」


突然カイトが立ち止まった。
2、3歩前に出て、おれも止まってカイトを見た。
カイトは両頬を押さえて赤くなっていた。
…分かりやす。

「そ…そういうのはまだ考えてないってば!」
「まだ?じゃあ将来的には考えるんだ?」
「そんなこと言ってないでしょ!」
「あれのどこがいいの?顔?」
「や…そういうんじゃないし!」

カイトはあたふたとする。
…分かってた反応だけど、なんかムカつくな。

「あいつ口悪いよ」

さらっとセカルを下げておく。

「それは知ってるわよ。いっつも文句ばっかり言われるし」
「ふーん。それなのに好きなんだ?」
「違うってば!セカルのことは…そんな…風には…」

段々と声が小さくなる。
カイトが下を向いた。
あー、これマジなやつだ。弄りづらいな。

「ハイハイ。じゃーセカルのことは何とも思ってない。何とも思ってない奴と一緒に初詣に行くっと。どんな関係なのかねー。あー友達だっけ?」
「どうだっていいでしょ!もー、なんであんたはそんなに突っ掛かってくんのよ!」

…面白くないからだよ。

何だってあんな男のこと好きなんだよ。
話してみた感じ、爽やかな先輩ってわけじゃなさそうだ。
どっちかっていうと陰があるような…なーんか嫌な感じがするんだよな。
姉ちゃんそういう嗅覚ないだろうから、おれが見ててやんないと。
あの男のことは、もうしばらく様子見だな。

「姉ちゃん弄るの楽しいからかなー」
「もー、ホント何なのよあんたは!ついてこないで!」
「帰り道が同じなんですー」

そんな風に言い合いながら、家に帰った。
姉ちゃんとの口喧嘩の年季なら、おれの方が上だ。



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