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道。 うちのこまとめページ

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アスフェルド学園7話 夜中の話

【2017.5.1】
アスフェルド学園7話 夜中の話

ゲームストーリーの後日談(当日の夜)の創作話です。
※ネタバレを含みます。

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7話は某キャラの印象がアップすると聞き、やらなきゃ(使命感)と思い。
数週間かけて5話から駆け抜けました。長いよ!

4話から各キャラにスポットが当たって、キャラの過去や正体が判明していき楽しいですね。
特に7話は、ドンドン封印事件の真相に迫っていき、うおお!と盛り上がりました。

そんな7話の後日談というか、その日の夜の話。
うちのことの絡みは、なんとなーく、こんな感じだったのかなと。

執筆時は7話までしか配信されていないので、その後の話で辻褄が合わないところが出たらすみません。
がっつりネタバレですのでご注意を。




【セカルside】

長い一日が終わった。


初めて自分自身が封印に巻き込まれ、講堂で教頭達と戦い、…そしてクラウン先輩のこと。
昼間の慌しさが嘘のように、陽は暮れて、学園内はしんと静まり返っていた。

様々な出来事が一気に押し寄せて、どっと疲れた。
ふらふらと寮に戻り、ミランに別れを告げて部屋に入ると、ベッドに背中から倒れこんだ。



フウキのメンバーに立ち込めた暗雲も、何とか収束しそうだ。
申し訳なさそうなクラウン先輩に、微笑みかけるフランジュ達を思い出す。

きっと大丈夫だ。ずっと一緒に居た仲間なんだから。




目を閉じる。
全身の脱力感。このまますぐに眠りにつきそうだ。

今日の出来事が、瞼の裏に映っては消えていく。
石化したクラウン先輩にみんなでお別れの挨拶をして、講堂を出ようとしたところに…



―リソル。




言葉遣いはいつも通りなのに、真っ白な肌に黒い服で。
あの姿は、一体何だったのだろう。


オーガでも竜族でもない、見たことのない種族。
…まるで魔物、のような、





止めだ。





頬を叩いて起き上がった。

リソルは仲間だ。
クラウン先輩を助けたときに、オレへ質問してきた真っ直ぐな瞳。
あの表情が、偽りだとは到底思えない。


『この姿のことは 絶対に秘密にしといてよ』


脳裏に焼きついた姿と、その言葉が結びつく。
約束、か。


オレは、あいつを信じたい。
今は、リソルの望む通りにしてやりたい。






大きく息を吐いた。
体は重いが、眠気は少し覚めたようだ。

頭の中が、まだ色々な映像で溢れかえる。
駄目だ。頭を冷やしたい。


ゆっくりと立ち上がり、のろのろとした足取りで外へ出た。











通学路まで出ると、遠くにぼんやりとした赤い光が見えた。
湖の中の遺跡の放つ光は、夜の闇に紛れて不気味に輝いていた。

光を見ながら、憩いのテラスの方角へ歩みを進める。
柵に手を掛けて、光をじっと見詰めていると、

「…何してんの」

後ろから声が掛かった。


驚いて振り返ると、そこには青い髪の少年、リソルが居た。
テラスの東屋の柱にもたれ掛かって、こちらを眺めていた。




「何マヌケな顔してんの?
何してるのかって聞いたんだけど」

わずかな照明に照らされたリソルの表情は、いつも通りの面倒くさそうな顔だった。
クラウン先輩や、リソルのことを考えていた…とは言えない。

「ちょっと…疲れたから。
夜風に当たろうと思って、な」

「ちょっと?ハッ、流石リーダー様は違うね。
他の連中はかなり疲れて、とっくに寝てるだろうにさ」

「オレだって結構疲れたよ」


よく聞き慣れたはずの罵りに、ついムッと返してしまった。
そんなオレの顔を見てか、リソルは嫌味ったらしく笑った。

「ふーん。伝説の転校生でも疲れるんだね」

「何だよ、やけに突っかかるな?」

「別にー?
今回はさ、とりわけ面倒に付き合わされたから。
オレもお疲れなの。それくらい察してよね」


リソルは、ハアア、とわざとらしくため息をついて、テラスのベンチに腰掛けた。
オレもテラスに歩み寄る。

「隣、いいか?」

「え、嫌だよ。離れて座ってくれる?」

座るのはOKなんだな。
毎日顔を合わせてるんだ、素直じゃないのはよく知ってる。

オレは1人分ほどリソルから間を空けて、ベンチに座った。



「お前だって、何してたんだよ?」

オレが質問を投げかけると、リソルは横目でこちらを見た。

「アンタと同じ。ちょっと涼みたくなっただけ」

「そうか」



季節は秋、10月。
テラスの脇には、ハロウィンのカボチャの飾り付けが光っている。
夜風は、もう身に染みる冷たさだ。

会話は途切れ、虫の音がわずかに聞こえるだけの静寂に包まれる。





「聞かないの?」

不意に、リソルが小さな声で呟いた。

「ん、何を?」

「…別に、いいんだけどさ」

リソルは視線を遠く、湖の方へ向けながらぼやいた。




…リソルの正体のこと、だろうか。

今、本人が話さないのなら、取り立てて聞く必要はない。
きっとまだ、その時ではないから。


―恐らく、その内に知る時が来ると思う。
そう遠くない、未来に。





「…ぷっ」

はたと気付くと、目の前にリソルが立っていた。
リソルは覗き込むように、顔を近づけてきた。

「何真面目な顔してんの?似合わないよ」

そう言うと、クスクスと笑いながらオレの頬をつねってきた。

「ぁにすんだよ!」

「ケッサクだね!
いやー、よく伸びる。スライム並じゃない?」

リソルは力いっぱいオレの頬を引っ張って楽しんだ後、一歩引いて、座っているオレを見下ろしてきた。


「あんまり難しい顔してないでさ。もっとどっしり構えてれば?
一応ずっとリーダーやってたわけだしね。それなりの器は備わったんじゃない?」

遊ばれながら掛けられたのは、意外な言葉だった。
リソルなりの褒め言葉だと分かる。


「…そうだな。問題児の束ね方も上手くなったしな」

「ねえ、その問題児に、まさかオレを含んでないよね?」

「自覚があるのか?」

「ぜーんぜん。オレは優秀だからねー」

手をひらひらさせて否定するリソルに、ついつい笑ってしまう。
なんだよ、と少し怒ってみせたリソルの顔は、赤らんだように見えた。





「じゃ、帰るね。
バカな会話に付き合ってても無駄だし、そろそろ寝るよ」

「ああ、おやすみな」

リソルは背を向けて、寮の方に歩んでいった。
…と思ったが、数歩進んだところで立ち止まった。




「約束、だからね」

闇に溶けそうな、小さな声。
顔は向こうを向いたままなので、表情は見えなかった。


けれど、

「ああ、約束だ」

オレが確かに返事をすると、リソルはそのまま何も言わずに歩み始めた。
闇の中へ消えていく影は、あいつが戦闘で呼ぶシャドウのように思えた。






『今回のコトは ふたりだけの
秘密だからね。 約束だよ?』


講堂での、リソルの言葉、顔つき。
目を閉じれば、まだ甦る。


ああ、約束は必ず守る。
お前はオレを信じてくれたから、力を使ったんだろ。






ひとりきりになったテラスに、冷たい風が通り抜ける。
湖を見ると、弱まることもなく赤い光が灯っていた。



恐らく、オレ達は、あの遺跡へ行くことになる。

そして、そこできっと…
この封印事件の、真実を掴むんだろうな。



これ以上、ここに居るのは無用だ。
明日対策室で眠そうな顔をしてたら、また憎たらしい顔で笑われるだろうからな。

もしくは、二人揃って眠そうにしていて、みんなに笑われるかも。
想像したら、少しおかしくて笑ってしまった。


明日も普段通り、フウキのメンバーで集まるんだ。




…きっと。

全員揃って、な。




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