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道。 うちのこまとめページ

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バージョン3.5後期 ムストの地下で

【2018.5.27】

ゲーム中にきょうだいの話が出ると、ささっと創作ネタが浮かびます。
本当にきょうだい好きだな。

ナドラガンド最終章、ver3.5後期の中盤の話です。
ネタバレなのでご注意を。

今回はカイトの話のみ。きょうだいは、弟のクウト。
過去に書いた、ver2.3のハナときょうだいの話から少しだけ繋がります。


《カイトside》
結界の消えたエジャルナの大神殿にエステラと共に乗り込んで、地下でナダイアと戦って勝利して。
あたしは死んだ。

青色の何かに体を貫かれ、突き刺す痛み。霞む視界。
地面に叩きつけられた体は、悲鳴も上げられないほど軋んだ。
倒れたアンルシア達がぼやけていき、あたしの記憶はここで一旦途絶えた。

みんなの願いを受けて生き返ったものの、創生の霊核は敵の手に渡ってしまった。
最終決戦の時は、すぐそこに迫っている。
ムストの地下の会議室で、クロウズとクウトとあたしの三人で、これからの話をしていた。
明日には、神墟ナドラグラムに向かうことになった。

「では、今日はこのくらいで。明日に向けて休みましょう」
そう言って、クロウズが会議に区切りをつけた。

クウトはテーブルに突っ伏して、疲れた声を上げた。
「はー…話が長いよ。姉ちゃん、理解できた?」
「でーきーまーしーたー!要は相手の親玉をぶっ飛ばせばいいんでしょ」
「絶対分かってないよこれ」
クウトがあたしを指さしながらクロウズに話しかける。
昔からホンットにムカつく態度なんだから!

「お二人とも変わりませんね」
あたし達のやり取りを見て、クロウズは静かに笑っていた。
「どこをどう見たら変わらないの?あんたら二人は、見た目からして別人なんだけど」
クウトは眉間に皺を寄せて、物言いたげにあたし達を交互に見た。

あたしとクロウズは顔を見合わせた。
オーガと竜族。
あたし達は、生き返しを受けた種族の姿をしている。
どちらも、エテーネの姿とは似ても似つかない。

「まあ…見た目は違いますがね」
クロウズは少し俯きながら言った。
帽子の鍔で、目は見えなかった。
「色々あったのよ。色々」
「色々って?」
クウトが無遠慮に聞き返す。

「色々…オーガになって五大陸を回ってネルゲルを倒して、レンダーシアに行ってアンルシアと一緒に戦って、飛竜でエテーネの村に行ったり…」
はたと、滅びたエテーネの村で待っている、あの子のことを思い出した。

「そうよ!プッケちゃんのこととか大変だったんだから!」
「いやそんなポップな名前付けてないよ。どうせハナのことだろうけど」
「ハナ?」
「ブタの形の。おれが錬金術で作ったやつ」
「そう!その子!あれっハナちゃんっていうの?」
あたしの言葉に、クウトはわざとらしいため息をついた。
ハナちゃん?そんな名前だっけ?

「ねーちゃんの記憶力と思考力でさ、よくここまで来れたよね。ホント周りの人に感謝しないと」
「うるっさいわねー!そりゃ、多少忘れてることはあるけどさ…。みんなに支えてもらう分、あたしは全力で戦うの!」
「カイトさんらしいです」
クロウズは目を伏せて笑っていた。

クロウズにも何度も助けられた。
もうだいぶ前の出来事の、グランドタイタス号での出会いを思い出した。
あのときは、まさかシンイだなんて夢にも思わなかったし、こうして共闘することも想像できなかった。
たくさんの人があたしの導いてくれたから、今ここにいる。

「シオンにもよく助けられたなあ」
「あの元カメさまの、馬のパペット?」
あたしが呟いたら、クウトが聞いてきた。

「そうそう、あれで結構イケメンなのよ!」
「馬が…イケメン?ねーちゃん昔から面食いだったけどさー、随分と守備範囲広くなったね」
「違うの!人間にもなるの!」
「説明不足なのも、昔から変わんないよねー」
ハイハイ、とクウトは分かったような口ぶりで返事をした。
そして思い付いたのか、続けて言った。

「イケメンといえば、ここにいる人も高身長でいいんじゃない?」
「んんー、タレ目はなー別に好きじゃないし」
「じゃあ点目は?」
「点目はちょっと」
「二人とも、誰の話をしているんですか」
黙って聞いていたクロウズが口を挟んだ。
苦い顔で抗議したのは、クロウズとしてなのか、シンイとしてなのか。
情けない顔で困るシンイが想像できて、思わず姉弟で吹き出した。

「みんな変わらないね」
ひとしきり笑った後で、クウトが口にした。
「そうねー。結局みんなそのままって感じ」
「お二人共、相変わらずで安心しましたよ。さあ夜も更けます。もう寝ましょう」

先に会議室を出ようとしたクロウズに、
「本当に寝なよ。準備とか言って夜更かしされたら堪んないんだから」
クウトがそう投げかけると、クロウズは「敵いませんね」と笑いながら出ていった。

「ったく…分かってんのかな」
やれやれ、とクウト。
「あんた達二人だけの時もそんな感じだったの?」
「まー、放っとくと無理するし。おれが見てないとダメだったよ」
クロウズの頑張りは目に浮かぶ。
こうやって文句を言うクウトも、十分に力を尽くしていたのも知ってる。

「あんただって人のこと言えないでしょ。さあ寝た寝た!」
「なんだよ、もう子供じゃないんだから」
「あたしにとっては、あんたはいつまで経っても手のかかる弟なの!…あ、そうだ」
「なに?」
「あんたに会ったら、一発殴ってやろうと思ってたんだけど」
「はあ?」
「まああんたも頑張ってたようだし?それはやめとく」
「当たり前だよ、意味分かんない」
「そのかわり、」
「…なんだよ」
うるさそうに返事をするクウトは、相変わらず生意気で。
それでも、あたしのたった一人の弟なんだから。

「バカクウト」
思いっきり抱きしめてやった。
クウトは驚いたのか何なのか、振り払うこともせず大人しかった。

クウトが60年後の私にテンスの花を用意して、手紙を残してくれた時に決めてたんだから。
絶対に生きて再会して、抱きしめてやるんだって。


少し間を置いて、クウトが胸元でモゴモゴ呟いた。

「胸が…エテーネとは全然違……っいってぇ!」

やっぱり殴ってやった。


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