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道。 うちのこまとめページ

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バージョン4.3 グルヤンラシュ

【2018.9.17(カイトside)・2018.9.18(セカルside)】

4.3クリアしました。ねえ。どうしたらいい。
放心したまま書き連ねます。

クリア後までのネタバレですのでご注意ください。
4.4以降のシナリオが追加されたら、辻褄の合わないところが出るかもしれません。
どうなるんだろうなあ…。少しだけ、救いを期待してるよ…。

ver4は見知った土地の過去を知ることができて、ウキウキと冒険心をくすぐり、そして波乱の展開で心を抉ってきますね。
もうやめて。心がもたない。ver4の終着点は一体どうなるのか…。





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《カイトside》

「知らせてくれて感謝する。大船に乗ったつもりで後はまかせておけ。
 お前はここで自由に過ごすがいい」

ウルベアの帝国技術庁でまさかの再会を果たした…グラ…えっと、グル、グルヤンラシュ!
覚えにくい。つまりはクオード。
あいつには10年の月日が過ぎたようで、見た目もすっかり歳をとっていた。
何だかあたしだけ置いていかれた気分。

時を渡るっていつまで経っても慣れない。
あたしは変わらないのにさ、街も、人も、どんどん変わっていっちゃうんだもん。



帝国技術庁でクオードにウルベア大魔神の話をすると、こちらの心配をよそに笑顔を見せた。
そしてあたしに、自由にしろと言って立ち去ろうとした。

「自由にって言われても…あたしはここに来たばかりでよく分かんないし。
 そーだ、聞きたいことは山ほどあるのよ!ねえ、クオードはさあ…」
「俺は忙しい。話は後にしてくれ」
あたしの言葉を遮って、クオードは背を向けて歩き出した。
もう、ちょっと待ってよ!

「そんなこと言わずにさあ!もー、背は大きくなったかもしれないけど、不愛想なのは変わってないわね!」
そう言ってちょっと膨れてみせたら、クオードは歩みを止めて振り返った。

「…変わってない?俺がか」
「そうよ。髪は伸びて…シワもちょっと増えたけど」
「お前な…」
クオードは、少し呆れたような顔でこちらを見た。
何だか昔…っていうのかな?10年前の、まだあどけない頃の表情がちらついたようだった。
ちょっと笑える。

「お前は全然変わってないな」
「そうね、あんたは10年経ったんだっけ?あたしはその、ええっと…他の時代にも飛んだりしたからさ」

あぶないあぶない…うっかりキュルルとの約束を忘れるところだった。
未来から来たことやメレアーデのことは伏せるって約束。
慌てて言葉を選んだけど、クオードは気に留めなかったのか、「そうか」と相槌を打つだけ。踏み込んだことは聞かれなかった。

「お前にとっては、あのエテーネ王国での出来事は、最近のことなのか?」
「んー…そんな感じかな、数ヶ月くらい前」
「俺にとっては、もう随分と前の話だ」

そう言うと、クオードはくるりと踵を返して歩いていった。

「あ、ちょっと!」
あたしの声に、クオードは一瞬だけ足を止めた。

「俺も…その当時なら、まだ…」
「ん?」

あたしの疑問符に返事はなく、クオードは再び歩き出して部屋を立ち去った。
もー、別にそんなに急ぐことないじゃない。
そう思っていたら、隣でふわふわしていた08号から電子音が響いて、リウ老師の元へ戻ることになった。











今になって思えば、あの時言いたかった言葉は…

『その当時なら、まだ戻れたかもしれない』

だったんだろうか。








*******************






『メレアーデ姉さん。
 俺はどこで道を間違えたんだろう?』

クオードの日誌のホコリを少し振り払い、膝の上に置いた。
椅子に座ったまま、辺りを見渡す。きちんと整理の行き届いた部屋。
机には、作業の途中だったのか、少し本が積まれている。
まるで、まだ…部屋の主が生きてるみたいに。

ぼーっとしていると、扉が開いてウルタ皇女とマリッチが入ってきた。

「カイト、ここにおったのか」
「ああ、ごめんなさい。勝手に部屋に入っちゃって」
「いや、構わんぞ」

ウルタ皇女は、あたしを見て優しげに目を細めた。
ただ、あたしの手元の日誌に目線が留まると、少し笑顔が陰った。


「そちは、グルヤンラシュの知人じゃったな」
「ええ…」

エテーネ王国で、ドミネウス王の野望を止めるため共闘した時のことを思い出す。
時見の神殿に乗り込む前に言われた、『お前がいっしょなら心強い』というクオードの声が、姿が、脳裏をよぎった。
メレアーデ、ディアンジ、ザグルフ、消えてしまったエテーネ王宮のこと、色んな記憶が浮かんでは消えていった。

「友だと…仲間だと、思ってた。今も…まだ、思って…いたい、ん、だけど」

こちらを静かに見つめるウルタ皇女の顔が、滲んで見えてきた。
ああ。じわりと溜まった涙がこぼれた。一度頬を伝うと、次から次へと溢れてきた。
やだ。止まってよ。

「どこ、で…間違った…ん、だろ…」


あの時の、夕日の下の皇女のように、嗚咽を上げて泣き崩れた。

『俺の夢は破れた。もはやなんの未練もない』

何が未練もない、よ。あんた、どれだけの過ちを犯したと思ってるのよ!
それが、こんな、こんな終わり方で、いいわけないじゃない!
どれだけの人が、犠牲になったの。国が、滅んだの。
ちゃんと、責任、持ちなさいよ……


『…撃て』

そう、ウルタ皇女に言い放ったときのクオードの顔は、あたしには、笑っていたように見えた。
本当に…何もかも終わった、っていう感じの、嘲笑みたいに思えた。


「クオード、っの…バカ…っ…!ばか…」

思いっきり叱ってやりたい相手は、もういない。
ウルタ皇女は寄り添って、あたしを抱き締めてくれた。

あたしの鼻をすする音と、グルヤンラシュの悪事を暴いたマリッチの電子音だけが、部屋を包み込んでいた。








《セカルside》
エテーネルキューブで、ダラズ大鉱脈の強制労働所に降り立った。
もっとも、今は強制労働を強いる場所ではないのだが。

ウルタ皇女の解放宣言により、捕虜は自由の身となった。
今この地に残っている者は、自らの意思でガテリア民の誇りを持って働いている。

オレは労働所の中央にある階段を下りて、管理事務所へと入る。


「おお、誰かと思えばセカル君ではないですか」

そう言って笑顔で出迎えてくれたのはリウ老師。
08号もオレの姿を確認すると、歓迎してくれているようだった。

「こんにちは。突然の訪問ですみません」
「いえいえ、あなたならいつでも歓迎しますよ。少しの間ですが、姿が見えなくなってどうされたものかと思っていたのですよ」


グルヤンラシュの断罪の後、オレは現代へと戻った。
ウルベア大魔神、パドレとの戦いに勝利し、キュロノスのことは不安に残っているが、ひとまず落ち着いたところだ。

「…オレのやるべきことを、やり終えてきました」

リウ老師が遺してくれた太陽の弾により、大魔神への対抗策は成功したことを説明し、礼をした。
ビャン皇子の活躍を聞くときのリウ老師は、それは嬉しそうに見えた。

…ビャン皇子がオレの時代にいると話すことは、この時代では皇子は見つからないことを意味する。
話すべきか悩んだが、皇子の助けなしには大魔神を倒せなかった。
話を聞いたリウ老師は詳しく問いただすことはなく、ただ静かに喜んでくれた。


「ここも活気が出てきましたね。上で働く皆さんも明るく見えました」
「そうでしょう。ウルタ皇女が捕虜の解放宣言をして、ビャン皇子の名誉も回復されました。グルヤンラシュに復讐を誓っていた者も、別の目標に向かって励んでいます」

その言葉を聞いて、一瞬の間ができてしまった。

リウ老師はオレの目を見ながら、

「グルヤンラシュの話でしょうか?」

そう尋ねてくれた。



「そうでしたか。グルヤンラシュとあなたに、そんな繋がりがあったとは」
エテーネ王国の話をすると、リウ老師は真剣に耳を傾けてくれた。

「ええ…この時代で再会して、本当に驚きました」
「セカル君の話は分かりました。私に聞きたいことがあるのでしょう?」

不躾だと分かっている。リウ老師にとっては、多くの犠牲を出す結果となった、良い思い出ではないことも分かっている。
それでも、

「はい。帝国技術庁でグルヤンラシュと一緒に研究をしていた時のことを、教えてください」

確かめたかった。リウ老師が見た、グルヤンラシュ…クオードのことを。




リウ老師は丁寧に、グルヤンラシュのことを話してくれた。
軍事強化を推し進める様子、決別に至るまで。

一通り話に区切りがつくと、真っ直ぐな瞳で質問を投げかけられた。
「セカル君は、グルヤンラシュの話を聞いて、どうするおつもりですか?」
「オレは…」


正直、クオードの犯した罪の数々を、信じられないでいた。
しかし、ウルベア帝国や帝国技術庁で話を聞いたり、文献を見たり…情報を集めれば集めるほど、クオードの罪は紛れもない事実として受け止めざるを得なかった。

「オレはきっと、あいつの罪を信じたくなかったんでしょうね」
「それで、セカル君はグルヤンラシュのことを確かめたかったということですか」
「…そうなります」
「何か、言いよどんでいるようにも見えますが」

そう、確かめたかった。それは事実だ。
だが、その先にある想いを、見透かされたような気がして。


「オレがいたら…オレがもっと何年も前にここに着いていたら、オレは、クオードを止めることができたんでしょうか」

蓋をしていた想いが、口からこぼれ出た。



頭を垂れた。リウ老師の顔を見ながら話すことはできなかった。
目を力いっぱい瞑った。涙の代わりに、オレの中で渦巻いていた、行き場のなかった言葉が溢れた。

「どのタイミングで、あいつが道を間違えたのか、探していました。どこに戻ればやり直せたのか。魔神兵を開発する前か、ジャ・クバ皇帝を暗殺する前か。
 でも…それでは、ウルタ皇女が皇帝を生き返らせようとしていたのと同じだと、分かっては、いたんです」

正しい方法でないことは分かっていた。
それでも、クオードを救う道を、探していた。

それなのに、ただでさえぐちゃぐちゃとした感情の奥底に、ひとつの矛盾した想いも抱いていた。

「そもそも、オレは…思うんです。10年前に、もしもクオードとオレが一緒にこの地へ来ていたとしても、きっとオレはあいつを止められなかった」


『自力で時を渡ることすらままならないのに、いつになればあの時代に戻れる?どうすればエテーネを救える…?』

『お前にこの絶望がわかるか!?』

クオードの叫びが、心に突き刺さっていた。

エテーネ王国で出会ったときから、時渡りの力で悩んでいたのは知っている。
時を渡ることができるオレは、本当の意味で、クオードの苦しみを理解することはできない。
あの言葉で、オレはお前との立場の違いを思い知った。
お前を救うことは…できなかったのだろうと。



「…すみません、こんな話を」
大きく息を吐いて顔を上げると、リウ老師は小さく首を振った。

「気になさらないでください。あなたが彼を大切に想う気持ちがよく伝わってきました。彼は良い友を、持っていたのですね」
「そうでしょうか…?」
ぼうっとしたオレの顔を見てか、リウ老師は諭すように話してくれた。

「少なくとも、あなたが彼の話をしてくれなければ、私は彼の過去について知ることはできませんでした。
 グルヤンラシュのしたことは、決して許されることではありませんが…友であるセカル君がいたことで、変わったことはいくつもあるのだろうと、私は思います」

そこでリウ老師は一息置いた。
そして、こう言った。

「だからもう、あなた自身を許してあげてください」



ウルタ皇女が国民に出した布告書に書いてある罪を見ても、国民から魔物とさえ呼ばれるグルヤンラシュの話を聞いても。
オレが許せなかったのは、クオードの罪ではなく、クオードを救えなかったオレ自身だった。


天を仰ぐように上を向くと、大きな魔神機の体に戻った08号と目が合った。
無機質なはずのその瞳から、優しい光が見て取れた気がした。





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