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道。 うちのこまとめページ

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バージョン5.2 魔仙卿

【2020.6.12】
ver5楽しいですねー!
ボイスが付いて、より一層ムービーの見ごたえがありますね。
今までとはまた違った冒険を楽しんでいます。

私はヴァレリア様に仕えて、ベルトロと酒場に行って愚痴を聞きたい。
でもバルディスタで生き残る自信が全くない。
城下町怖くて歩けねーよ。あらくれ溢れすぎだろ。

そんなおっかない戦士達を震え上がらせてまとめるヴァレリア様が好きだよ。
それをコソコソと裏で支えるベルトロも好きだよ。
勝手に相棒とか言うなよな!お前そういうとこだぞ!


さて、バルディスタ語りはもういいな?
5.2をクリアして、予想していなかった流れ弾を食らいました。魔仙卿です。
シナリオ班、こっちの心臓狙い撃ちしてくるの何なん…恐ろしい…!


そんなわけで魔仙卿にまつわる創作話です。
カイトsideとセカルside、それぞれ独立した世界です。

ちなみにカイトもセカルも種族姿です。
ストーリーは種族でやってるから…エテーネで見たかったと思っても、時既に遅し。





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《カイトside》

「う…嘘でしょ~~~?!?!!」

「姉ちゃん…声が大きい。ユシュカ達に聞こえるだろ」

魔仙卿から二人で話したいと言われ、魔選の儀礼場に連れてこられた。
そして魔仙卿が着ぐるみみたいに頭を取ったと思ったら、そこから顔を出したのは…。

見間違えるはずもない。
無造作に跳ねる白い髪に、あたしと同じ紫の瞳。
少し幼い顔立ちの生意気な弟、クウトだ。

「な、なんであんたがここに…っていうか魔仙卿は?!どこに行ったの?!」

「落ち着けって。おれが魔仙卿だって」

「はああああ!??」

あたしが何度も絶叫を上げたことに怒りつつも、クウトは事のあらましを話してくれた。







「つまり…あんたは魔族になっちゃったわけね?」

「まあそんな所だね。いいよ、姉ちゃんが細かいところまで理解してくれるとは思ってないから」

「ほんっっとに生意気!」

「ハイハイ。その生意気な弟に、どれだけ助けられてここまで来たの?」

「ぐう…」

あたしの悔しげな顔を見て、クウトはカラカラと笑った。

「その顔久しぶり!出来ればエテーネ姿で見たかったけど、オーガでも同じように見えるから、流石は姉ちゃんだなー。
元のオーガの人はクールっぽいから、姉ちゃんが中に入って表情崩れてるのは可哀想で同情するよ」



ひとしきり笑った後、クウトはあたしに向き直った。

「それで、大魔王になってくれるよね?」

クウトの質問に、ハッキリと
「イヤだ」
と答えると、

「はあああ!?」

今度はクウトが絶叫した。



「いや、おれがどこまでお膳立てしたと思ってるの?!3つの国をまとめて、姉ちゃんが大魔王になるのを認められる流れを作ったんだよ?ここで『イヤだ』なんて通じないよ!」

「あのねぇ、あたしは勇者の盟友なのよ!魔界に行って大魔王になっちゃいましたー!…って、何よそれ!アンに何て説明すればいいわけ?!
ユシュカもイルーシャも、すっかりあたしを大魔王に推しちゃってるけどさあ、そもそもあたしはなる気ないんだってば!」

あたしがまくし立てると、クウトは呆れたような顔でため息をついた。

「まあ…うん、姉ちゃんはまずそう言うと思った…。
あのさ、さっき言ったよね。ここはおれにとって安息の地なんだ」

「うん、聞いた」

「おれは魔界もアストルティアも守りたい」

「それはあたしも同じよ」

アストルティアに残してきたみんなはもちろん、魔界で出会った人達のことも見捨てるわけにはいかない。
大魔瘴期で滅ばせるなんてゴメンよ。
もちろん一緒に立ち向かうつもりでいる。

あ、でも魔界を助けると、ヴァレリアはアストルティアに侵攻しちゃうのかな?
それは止めないといけないよなー…。
うーん、その場合、あたしはアンと共に戦わなくちゃいけないの?
ユシュカとアスバルはアストルティアに好意的だから、加勢してくれるかも?



なんてしばらく考えてたら、黙って見ていたクウトが口を開いた。

「…これは、姉ちゃんにしか出来ないんだよ」

「え、何が?あたしにしか、ってどういうこと?」


「お願い。おれは姉ちゃんに、大魔王になってほしい」

クウトの瞳は、揺れて見えた。
普段は生意気な顔してるのに。
幼い頃にあたしの後をついてきてはよく泣いてた、あの頃みたいな顔に見えた。

クウトは気付いてないかもしれないけど、あたしはこの顔に弱い。
だって大事な弟が泣きそうな顔してたら、お姉ちゃんが守らないわけにはいかないじゃない。


「…あんたにとっては、それが正しい道なわけ?」

「うん、そうだよ」

「じゃあ分かった。あんたの選んだ道を信じるわ。お姉ちゃんに任せなさい!」

あたしが胸を張ってそう宣言すると、クウトはきょとんとした。


「何よ、おかしい?」

「いや…やけに聞き分けいいなって」

「だってあんた、あたしより頭いいじゃない?あんたが正しいって言うなら、それが正しいんだってば!」

そう断言したら、みるみるうちにクウトの顔が歪んだ。
あ、これ昔からよく見るやつ。
人を小バカにする時のムカつく顔だ。

「何その理論。
…はー、やっぱり姉ちゃんは姉ちゃんだ。サイコーに頭悪い!ほんとに大丈夫かなー。おれまで頭悪くなりそう」

「なんですって~!?」


怒るあたしをよそに、クウトは涙を浮かべるほど声を上げて笑っていた。

「何がそんなにおかしいのよ!」

「そんなバカな姉ちゃんを信じてここまでやってきた、バカなおれが、かな」

「は?何よそれ…」


クウトは「あー笑った」と言いながら、目尻を手で拭った。

「そろそろ戻ろう。ユシュカとイルーシャが待ってる」


クウトが魔仙卿の頭を手に取り、被ろうとしたので、慌てて声をかけた。

「待って!あのね、あんたと会ったら話したいこといっぱいあったの!
エテーネの村でね、復興のためにシンイとハナちゃんが奮闘してて!」

「うん」

クウトはエテーネの顔を見せたまま、静かに頷いた。

「クオードと…メレアーデのこととか、パパとママ…、ファラス、キュルルの、ことも…」

エテーネ王国のこと、みんなの顔を思い浮かべて唇を噛んだ。

クオードとファラスの最期、悠久の旅に出たメレアーデ、身を呈してあたしを送り出してくれたパパ、屋敷でいつもあたしを待ってくれてるママ、キュルルとのお別れ…。


「姉ちゃん」

「…なによ」

クウトはかすかに微笑んだ。

「たくさん冒険したね」

「…うん」

短い言葉だったけど。
その言葉には『たくさん』詰まっている。
あたしとクウトが歩んできた長い旅路が。たくさん。


「また聞かせて。おれもたくさん話したいから。
今は、戻ろう」

「…分かった」

クウトの穏やかな顔を見たら、涙が零れそうになった。

情けないわよカイト!
こんなところで、弟の前で泣いてる場合じゃないでしょ!



唇を噛んで下を向いていたら、

「姉ちゃんのことは、おれが必ず…」

そんなクウトの声が聞こえた。

「必ず?」

あたしが顔を上げて聞き返すと、クウトは魔仙卿の顔をすっぽりと被った。



「…さて、戴冠の儀について、皆に話さねばならん」

あののんびりとしたヘンテコな声が、部屋に響いた。
え?あれ?今そういう場面だった?

あたしの質問は完全に無視して、クウトはすっかり魔仙卿モードに戻ってしまった。

「ちょっと、ズルい!何言おうとしたの!」

「分かっているとは思うが、その口調のまま皆の前に出るでないぞ」

「あーもう!ムカつく~!バカクウトー!」

「…果たして隠し通せるのか、先が思いやられる」


納得いかなかったけど、このままケンカしてるわけにもいかないし。
あたしの顔変になってないかな?と気にしながら、ユシュカとイルーシャの待つ謁見の間に戻った。






------------
《セカルside》

戴冠の儀の最中に、魔仙卿…妹のタキが突然、魔物・魔瘴魂グウィネーロをけしかけた。
3人の魔王やペペロ、従者達の健闘もあり、魔物は退けたが…。
心にモヤが掛かったままだ。


今はオレ一人で、騒動のあった玉座の間にいる。
大魔王の侍従だというカーロウが居たが、一人にしてほしいと頼んで、しぶしぶ下がってもらった。

ペペロが作ってくれた玉座…虫のような形をしていて、緑、赤、青…原色をベースにしたカラフルな彩色。
虫の角にも見える三日月形の出っぱりは、ペペロいわく大魔王らしい前衛的なフォルム。
あいつの衣装や髪型を彷彿とさせる。
オレには似合わない派手なデザインに、少し笑ってしまう。

イルーシャが言っていたように、寝る間も惜しんで頑張って作っていたであろう姿は容易に目に浮かぶ。
あいつの得意気な顔も浮かんできて、元気を貰える気がするから、オレはこの玉座を気に入っている。


玉座の傍らには、アスバルから譲り受けた王冠が置いてある。
中央に填められた赤い宝石のような装飾は、何だか魔物の眼に見える。
それもそうかもしれない。“大魔王の王冠”なのだから。

この王冠が、オレの頭に被せられることはなかった。



『新たなる大魔王よ……
果たして そなたに この怨念の連鎖を
断ち切ることが できるかな?』


どうしてタキはあんな行動に出た?
オレが大魔王になるように事を運んだのは、間違いなくあいつだ。

『おにいちゃんには 大魔王になってもらって
この魔界を 救ってほしいの』

確かにそう言ったんだ。
アンルシアやルシェンダ様、ホーロー様の顔が浮かんだが…。
他ならない妹の頼みを断るはずもない。
たとえ大魔王になってでも、タキの守ってきた魔界を守る、一緒に世界の滅亡を止めようと誓った。


…しかし、戴冠の儀で待っていたのはあの騒動。

タキには何か他の考えがある?
それとも何か…魔仙卿の力に乗っ取られているとか?


…いや、タキと二人きりで話した時は、変わった様子はなかった。

『わたしにとっては 数百年以上前に
時獄の迷宮で 会って以来なんだけど
おにいちゃんからすると 最近のことなのかな』

数百年。
その言葉に、心ははち切れそうだったが。


イッショウやマザー・リオーネ、錬金術から生まれたブタのハナにタキの話を聞いた時は、オレの時渡りの力で60年前に飛ばしてしまい、過酷な旅をさせてしまったと思ったが…。

そこから、ナドラガンドを巡る旅路では様々な場所で出会い、5000年の時を越えエテーネ王国、あらゆる時代に飛び…。

そして魔界で数百年ときた。
この小さな妹の体に、どれだけの負担を強いてきた?

二人でエテーネの村で暮らしていた頃より、タキは随分とたくましくなった。
オレが今この地に辿り着くまでに、タキには数多くの場面で助けられてきた。



先の戴冠の儀のことは、何者かに操られていると考えるより、タキの計画あっての行動だと考える方が納得がいく。
…あいつは、いつも自分を犠牲にしてばかりだから。

ナドラガンドに旅立つ前に、グランドタイタス号でアンルシアとラグアスを拐われた時は、タキと敵対するのかと動揺したが。
結局はオレのために動いていたんだ。
助けられてばかりだった。兄として情けないほどに。


タキが魔仙卿として話していた言葉を思い出す。
アストルティアと魔界を繋ぐには、二つの世界の怨念の連鎖を断ち切る必要がある。
それがオレの役目…?
魔界で信頼を得て、かつアストルティアの人間であるオレが大魔王になることで、切り離された二つの世界が結ばれる?

しかしタキは、大いなる闇の根源…ジャゴヌバと契約することで体を繋ぎ止めている。
もしその鎖を切ったら?タキはどうなる?

妹は…消えるのか?

「…そんな選択、出来るかよ」



魔界がやっと辿り着いた安息の地だと言っていた。
守ってやりたい。この地も。タキも。
どちらも、というのは欲張りなんだろうか。

もしどちらか選べと言われたら?
オレは…。




つい先日、ゼクレスの国を守って母を失ったアスバルのことを思い浮かべる。
エルガドーラの行いは、到底許容できるものではないが…それでも、アスバルは母を助けると言った。あんなにも自身を痛めつけた相手なのに、だ。
肉親の情は切り離せないものだと思い知らされた。

結果的には家族を失ったが、
『亡き母 エルガドーラが愛した
この ゼクレスを…
我が生涯をかけて 守り 導いていくと!』
そう宣言したアスバルの顔は、見違えるほどに凛々しいものだった。


ナジーンを失ったユシュカが、ファラザードのために奔走している姿は間近で見ている。
そこに、かつて魔仙卿に指摘された『傲慢』さはない。
ナジーンが見ていたら、その変化に顔を和らげるだろうか。

一度はティリアとして退きかけたヴァレリアもまた、バルディスタを治めるために戻ってきた。
ヤイルの手により多くの子供達を失ったヴァレリアも、
『もう 二度と 私の目の前で
大事な者の命を 奪わせたりはしないッ!!』
と再び武器を手に立ち上がった。


オレはどうだ?
大事な人を…妹を失ったとしても、この世界のために尽力出来るか?




…いや。
オレはタキを失ったわけじゃない。
どうして居なくなった時のことを考える必要がある?

そうだ。
タキを失わないために、これから立ち向かうのだと。



「もしも今、タキが困っているのなら、今度はオレが助ける…」

誰もいない広間で、ぼそりと呟いた。


ナドラガンドへ旅立つ前、神の器を守るためにアストルティアを駆け巡っていた頃。
まだタキの目的も分からない頃だったが、それでもその言葉と共に決心したんだ。
オレは妹を信じる。そして困っているのなら手助けすると。


何も変わらない。そのままでいい。
いつだって、オレはタキの味方だ。
たった一人の兄なんだから。

エテーネの村で過ごしていた頃、あいつのヒーローだった昔みたいに、いい格好、見せないとな。





『大魔瘴期に 立ち向かうため 魔族を束ね
この魔界を導いていってくれよ……大魔王サマ』

“大魔王サマ”とは、何ともユシュカらしいからかった呼び方だが。

オレの選んだ道とユシュカの選んだ道は交わった。
ナジーンが望んだように、これからは手を取り合って、この魔界を救う。

ヴァレリアもアスバルも、ペペロ、イルーシャだって、みんな魔界のために尽力してくれるだろう。



『そなたは これで 大魔王となった
どうか 魔界を 導いていってくれ

たとえ この先 何が起ころうとも……』



魔仙卿として残したタキの言葉を反芻する。


何が起ころうとも、か。
言ってくれるよ。
これからオレに降りかかることへの、お前なりの助言だったんだろ?


今更だ。
どんな困難な道になろうとも、必ず救ってみせる。

お前も。この世界も。







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ちょっとだけあとがき。
過去に書いた、

▼バージョン2.3 ハナときょうだいの話
▼バージョン3.0 兄弟の話

の話を少し絡めてみました。




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