どうか幸せになってくれ
【2022.9.18】
診断メーカーの『どうか幸せになってくれ』というキーワードから書いた話。
セカル社会人2年目、カイト社会人1年目、クウト大学3年で、セカルとカイトの結婚式の数日前。
-----------------------------
夜の9時頃、クウトからカイトに電話が掛かってくる。
「クウト?どうかした?」
『式の準備出来てんのかなーと思って』
「出来てます!…って言いたいトコだけど、毎日ドタバタだよ~」
カイトが分かりやすく「うえーん」と声を出す。
クウトも分かりやすくため息をついた。
『セカルは?』
「最近仕事忙しいみたいで、帰り遅いのよねー」
カイトの返事に、クウトは少し苛立ちを見せる。
『は?もう式まで日にちないでしょ。何やってんのあいつ』
「仕方ないわよ。仕事なんだから」
『カイトだって仕事してるだろ』
「あたしはセカルに比べたら、まだ楽だからねー」
『助け合うのが夫婦ってもんだろ。あの男…』
「セカルはよくしてくれてるよ?あんまり仕事仕事!にならないように、気を遣ってくれてるのも分かるし」
『まあ、それは想像つくんだけど…』
イライラするクウトだったが、セカルのことは理解しているので少しトーンが下がった。
クウトが話を続ける。
『…式の準備の話だけど、何か手伝えることあんの?』
「えっ手伝ってくれるの?」
『大学生は余裕あるから』
「頼もしい…」
声色からカイトのキラキラした顔が想像出来て、クウトは気を良くする。
『家行ってもいいよ』
「え!遠いでしょ」
『ただし、電車代はそっちで見てよね』
「うーん、それは厳しい…結婚式ってホントお金かかるのよー」
『大して稼ぎもない中でよく式やろうと思ったよね』
「だって夢だもん!セカルも実家も、式いいねって言ってくれたし!新卒社会人でお金がないのは仕方ないですー」
『はあ…まあいいけどね。少しは足しになるように働きなよ』
「ほんとトゲあるなあ」
カイトが頬を膨らませる。
「そういえば、何か用あったの?」
カイトが思い出したように用件を聞いた。
『ん?ああ…まあ』
クウトが少し言葉を濁す。
「珍しいわね。いっつも言いたいことはずけずけ言うのに」
『…言いたくないのかもな』
「何を?」
クウトは一息ついてから言った。
『カイト…姉ちゃん、幸せになってよ』
カイトは一瞬黙った。
「ありがとう…」
『もう言わないからね。まー二人がどうなろうと、おれには関係ないし?勝手にしてよね』
「もー!ちょっと感動すること言ったと思ったら、すぐそれなんだから!」
しばらくギャーギャーと言い合っていると、セカルが帰ってきた。
「あー、おかえり」
「ただいま。誰?」
「クウト」
「クウト?」
セカルが荷物を置きながら聞き返した。
「セカル帰ってきたよ」
電話でカイトがそう告げると、クウトがすかさず注文した。
『代わってよ』
「セカルに?分かった」
カイトがセカルに電話を渡す。
「なんでオレ?」
「さあ?」
「クウト?何か用か?」
『言いたいことは色々あるんだけどさー。あんま仕事漬けでカイトのこと寂しがらせないようにね』
「…それは気をつけてる。本人から何か言われたか?」
「別に。言わないけど、そういうの思うだろうから気を付けろって話」
「分かってる。何だ?それを言うために代わったのか?」
『いーや、こっから本題。さっきカイトに「幸せになれ」って言った』
セカルが息を飲む。
『幸せにしなよ。しなきゃ許さない。何かあれば、いつでもおれがカイトの弱みにつけ込めることを忘れないでよ』
「…お前が入ってくる余地は与えねぇよ」
『ハハ!それはいいけどさ、あんたの声はカイトに聞こえてるんだからね?あとでボケーっとした顔で「何の話してたのー?」って聞かれるよ』
「そうだったわ」
セカルがチラリとカイトを見ると、カイトが首を傾げた。
「じゃあ言いたいことは済んだか?切るぞ」
『ハイハイ。式まであんま日がないんだから、しっかりやってよね』
「言われなくとも」
『じゃーね』
セカルが電話を切った。
「何の話してたの?」
クウトの予想通りで、流石は姉弟だなと実感する。
「式の準備しっかりしろってさ」
「うん、それあたしにも言ってた。クウトの入る余地がないっていうのは?」
「あいつが手伝えるようなことはないだろ」
さらりとセカルが流して、カイトは納得する。
「でもクウト、手伝ってくれるって言ってたよ」
「そんな話してたのか?」
「うん」
セカルは少し遠くを見る。
「お節介というか何というか…。クウトがオレらの間に首突っ込むのは、これからも変わりそうにないな」
「まーいいじゃない!頼れる家族がいるのは助かるでしょ」
「家族ねぇ…」
セカルがカイトの頭を撫でた。
「なあに突然?」
「ん?そういう気分だっただけ」
「あ、ご飯温めていい?」
「頼む。着替えてくるわ」
「はーい」
トタトタと台所に歩いていくカイトを見て、セカルは目を細めた。
セカルが着替えてくると、カイトが皿を並べていた。セカルが食卓につく。カイトも向かい合わせで座った。
「ありがとな」
「いーえ!毎日お仕事お疲れさまです」
「それはお前もだろ」
「そうだけどさー。セカルに働いてもらわないと家計が厳しいので…」
「…頑張ります」
セカルが少し苦い顔をする。
「あ!適度にね!たまには早く帰って、あたしのこと構ってくれないと寂しいです」
セカルは、クウトに『寂しがらせるな』と電話で言われたことを思い出す。
「クウトに何か言われたか?」
「え?何だったかなあ…途中からケンカしてたから忘れちゃった」
てへ!とカイトは舌を出す。クウトも報われないな…と思うセカル。
「『幸せになれ』って言われたんじゃないのか?」
カイトが驚いて顔を赤らめる。
「え!あいつセカルに何話してんの!?や…何か恥ずかしいじゃない、そんな話されるの」
「まークウトらしくはないな。あいつがそんなこと言うなんて」
「でしょ?何かあったのかな…大丈夫かな」
不安そうにするカイトを見て、セカルはフォローする。
「あいつもたまには素直になって、結婚のお祝い言いたかったんだろ。ついでにオレに釘刺しつつ」
「何か言われたの?」
「オレには、『幸せにしろ』って言ってきた」
「…そっか」
カイトはフフフと笑う。
「お節介ですなあ」
「全くだ」
セカルは箸を持った。
カイトはセカルが食べる様子を微笑んで見ていた。
「何か楽しいか?」
「あたし奥さんしてるなーって実感してます」
「そうだな。美味いよこれ」
「えへへ。昔じゃ考えらんないなー。高1の時さ、セカルの家でクリスマスケーキ作ったの、アレ酷かったよねー」
「あったな…。あの時はホントどうしようかと思った。一緒に暮らすようになったら、オレが料理することになるんだろうなーって…」
セカルの言葉を遮り、カイトが尋ねる。
「その時から結婚する気あったの?」
「え?」
セカルの箸が止まる。二人で顔を見合わせた。
「…まあ、想像はするだろ」
「へー」
「何だよ、ニヤニヤすんな!」
セカルが少し赤くなる。
「だって~。ちょいちょいセカルの片想いの頃の話聞くの楽しいんだよねー」
「いや片想いじゃねーし!お前もオレのこと好きだったろ!」
「あたしも片想いだったから、二人とも片想いです!」
「なんだよそれ」
セカルは照れた顔を隠すように、下を向いて箸を進めた。
「お色直しの時、クウトと退室でいいんだよな?」
「うん。セカルはタキちゃんとでしょ」
「ああ。タキはカイトとも組みたいだろうけど」
「4人で一緒に出る?」
カイトの提案に、セカルはポカンとする。
「それ…アリかもな」
「でしょー!今から変更間に合うかな?」
「コーディネーターさんには悪いけど、言ってみる価値はあるかも」
「へへ。明日聞いてみるねー」
「よろしく」
セカルが皿を持って流し台に行く。
片付け始めるセカルを見ながら、カイトが呟いた。
「色々あったけどさ、式もうすぐなんだね」
「そうだな」
「最高の式にしようね」
「もちろん」
二人で顔を見合わせて笑い合った。
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診断メーカーの『どうか幸せになってくれ』というキーワードから書いた話。
セカル社会人2年目、カイト社会人1年目、クウト大学3年で、セカルとカイトの結婚式の数日前。
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夜の9時頃、クウトからカイトに電話が掛かってくる。
「クウト?どうかした?」
『式の準備出来てんのかなーと思って』
「出来てます!…って言いたいトコだけど、毎日ドタバタだよ~」
カイトが分かりやすく「うえーん」と声を出す。
クウトも分かりやすくため息をついた。
『セカルは?』
「最近仕事忙しいみたいで、帰り遅いのよねー」
カイトの返事に、クウトは少し苛立ちを見せる。
『は?もう式まで日にちないでしょ。何やってんのあいつ』
「仕方ないわよ。仕事なんだから」
『カイトだって仕事してるだろ』
「あたしはセカルに比べたら、まだ楽だからねー」
『助け合うのが夫婦ってもんだろ。あの男…』
「セカルはよくしてくれてるよ?あんまり仕事仕事!にならないように、気を遣ってくれてるのも分かるし」
『まあ、それは想像つくんだけど…』
イライラするクウトだったが、セカルのことは理解しているので少しトーンが下がった。
クウトが話を続ける。
『…式の準備の話だけど、何か手伝えることあんの?』
「えっ手伝ってくれるの?」
『大学生は余裕あるから』
「頼もしい…」
声色からカイトのキラキラした顔が想像出来て、クウトは気を良くする。
『家行ってもいいよ』
「え!遠いでしょ」
『ただし、電車代はそっちで見てよね』
「うーん、それは厳しい…結婚式ってホントお金かかるのよー」
『大して稼ぎもない中でよく式やろうと思ったよね』
「だって夢だもん!セカルも実家も、式いいねって言ってくれたし!新卒社会人でお金がないのは仕方ないですー」
『はあ…まあいいけどね。少しは足しになるように働きなよ』
「ほんとトゲあるなあ」
カイトが頬を膨らませる。
「そういえば、何か用あったの?」
カイトが思い出したように用件を聞いた。
『ん?ああ…まあ』
クウトが少し言葉を濁す。
「珍しいわね。いっつも言いたいことはずけずけ言うのに」
『…言いたくないのかもな』
「何を?」
クウトは一息ついてから言った。
『カイト…姉ちゃん、幸せになってよ』
カイトは一瞬黙った。
「ありがとう…」
『もう言わないからね。まー二人がどうなろうと、おれには関係ないし?勝手にしてよね』
「もー!ちょっと感動すること言ったと思ったら、すぐそれなんだから!」
しばらくギャーギャーと言い合っていると、セカルが帰ってきた。
「あー、おかえり」
「ただいま。誰?」
「クウト」
「クウト?」
セカルが荷物を置きながら聞き返した。
「セカル帰ってきたよ」
電話でカイトがそう告げると、クウトがすかさず注文した。
『代わってよ』
「セカルに?分かった」
カイトがセカルに電話を渡す。
「なんでオレ?」
「さあ?」
「クウト?何か用か?」
『言いたいことは色々あるんだけどさー。あんま仕事漬けでカイトのこと寂しがらせないようにね』
「…それは気をつけてる。本人から何か言われたか?」
「別に。言わないけど、そういうの思うだろうから気を付けろって話」
「分かってる。何だ?それを言うために代わったのか?」
『いーや、こっから本題。さっきカイトに「幸せになれ」って言った』
セカルが息を飲む。
『幸せにしなよ。しなきゃ許さない。何かあれば、いつでもおれがカイトの弱みにつけ込めることを忘れないでよ』
「…お前が入ってくる余地は与えねぇよ」
『ハハ!それはいいけどさ、あんたの声はカイトに聞こえてるんだからね?あとでボケーっとした顔で「何の話してたのー?」って聞かれるよ』
「そうだったわ」
セカルがチラリとカイトを見ると、カイトが首を傾げた。
「じゃあ言いたいことは済んだか?切るぞ」
『ハイハイ。式まであんま日がないんだから、しっかりやってよね』
「言われなくとも」
『じゃーね』
セカルが電話を切った。
「何の話してたの?」
クウトの予想通りで、流石は姉弟だなと実感する。
「式の準備しっかりしろってさ」
「うん、それあたしにも言ってた。クウトの入る余地がないっていうのは?」
「あいつが手伝えるようなことはないだろ」
さらりとセカルが流して、カイトは納得する。
「でもクウト、手伝ってくれるって言ってたよ」
「そんな話してたのか?」
「うん」
セカルは少し遠くを見る。
「お節介というか何というか…。クウトがオレらの間に首突っ込むのは、これからも変わりそうにないな」
「まーいいじゃない!頼れる家族がいるのは助かるでしょ」
「家族ねぇ…」
セカルがカイトの頭を撫でた。
「なあに突然?」
「ん?そういう気分だっただけ」
「あ、ご飯温めていい?」
「頼む。着替えてくるわ」
「はーい」
トタトタと台所に歩いていくカイトを見て、セカルは目を細めた。
セカルが着替えてくると、カイトが皿を並べていた。セカルが食卓につく。カイトも向かい合わせで座った。
「ありがとな」
「いーえ!毎日お仕事お疲れさまです」
「それはお前もだろ」
「そうだけどさー。セカルに働いてもらわないと家計が厳しいので…」
「…頑張ります」
セカルが少し苦い顔をする。
「あ!適度にね!たまには早く帰って、あたしのこと構ってくれないと寂しいです」
セカルは、クウトに『寂しがらせるな』と電話で言われたことを思い出す。
「クウトに何か言われたか?」
「え?何だったかなあ…途中からケンカしてたから忘れちゃった」
てへ!とカイトは舌を出す。クウトも報われないな…と思うセカル。
「『幸せになれ』って言われたんじゃないのか?」
カイトが驚いて顔を赤らめる。
「え!あいつセカルに何話してんの!?や…何か恥ずかしいじゃない、そんな話されるの」
「まークウトらしくはないな。あいつがそんなこと言うなんて」
「でしょ?何かあったのかな…大丈夫かな」
不安そうにするカイトを見て、セカルはフォローする。
「あいつもたまには素直になって、結婚のお祝い言いたかったんだろ。ついでにオレに釘刺しつつ」
「何か言われたの?」
「オレには、『幸せにしろ』って言ってきた」
「…そっか」
カイトはフフフと笑う。
「お節介ですなあ」
「全くだ」
セカルは箸を持った。
カイトはセカルが食べる様子を微笑んで見ていた。
「何か楽しいか?」
「あたし奥さんしてるなーって実感してます」
「そうだな。美味いよこれ」
「えへへ。昔じゃ考えらんないなー。高1の時さ、セカルの家でクリスマスケーキ作ったの、アレ酷かったよねー」
「あったな…。あの時はホントどうしようかと思った。一緒に暮らすようになったら、オレが料理することになるんだろうなーって…」
セカルの言葉を遮り、カイトが尋ねる。
「その時から結婚する気あったの?」
「え?」
セカルの箸が止まる。二人で顔を見合わせた。
「…まあ、想像はするだろ」
「へー」
「何だよ、ニヤニヤすんな!」
セカルが少し赤くなる。
「だって~。ちょいちょいセカルの片想いの頃の話聞くの楽しいんだよねー」
「いや片想いじゃねーし!お前もオレのこと好きだったろ!」
「あたしも片想いだったから、二人とも片想いです!」
「なんだよそれ」
セカルは照れた顔を隠すように、下を向いて箸を進めた。
「お色直しの時、クウトと退室でいいんだよな?」
「うん。セカルはタキちゃんとでしょ」
「ああ。タキはカイトとも組みたいだろうけど」
「4人で一緒に出る?」
カイトの提案に、セカルはポカンとする。
「それ…アリかもな」
「でしょー!今から変更間に合うかな?」
「コーディネーターさんには悪いけど、言ってみる価値はあるかも」
「へへ。明日聞いてみるねー」
「よろしく」
セカルが皿を持って流し台に行く。
片付け始めるセカルを見ながら、カイトが呟いた。
「色々あったけどさ、式もうすぐなんだね」
「そうだな」
「最高の式にしようね」
「もちろん」
二人で顔を見合わせて笑い合った。
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