目標
【2022.5.1】
1年半ほどの両片想いを経て、ようやく付き合い始めた頃。
たまに初々しさが出る。セカルの根回しの早さが分かる話。こういう男です。
---------------------------
(セカル高3、カイト高2、クウト中3で卒業後の3月)
セカルの部屋にカイトが来た。
床に置いてあるテーブルを挟んで、向かい合わせで座って話をする。
「模試の結果持ってこいってどういうこと?」
「見せてみろ」
「どうせ出来ませんけど?」
カイトが口を尖らせながら用紙を渡す。
「分かってる。現状把握のため」
セカルが用紙を広げて、結果を眺める。
カイトはジュースを飲みながら、セカルの様子を眺めていた。
しばらくして、セカルは重々しく口を開いた。
「カイト、志望校どこ?」
「え?うーん、ハッキリ決まってないけど、一応この辺…っていつも書いてる」
模試の志望欄を指さす。県内の大学だった。
「具体的に何かやりたいことがあるわけじゃないんだな?」
「うん…まだ分かんない」
「なら、絶対にここに入りたいってわけじゃないな?」
「うん…?」
セカルの立て続けの質問に、カイトが首を傾げる。
「あのさ、オレと同じ大学受ける気ない?」
「えっ?!」
カイトが大きな声を上げた。
「無理でしょ無理!セカル、偏差値いくつだと思ってるの?!」
「そう言うと思った。でもな、学部によって結構差があるんだよ」
セカルは学校の資料をテーブルに広げ始めた。
カイトはポカンとしながら一緒に見る。セカルが資料を指差した。
「総合学部とかは案外低い」
「あ、ホントだ。全然違う」
「今やりたいことがないなら、こういう所に入って色々と学んで、やりたいことを探すのもアリだと思う。そういう面では、こういう学部が最適」
「うん…?」
話の意図が分からず、カイトはキョトンとする。
「カイト、オレと一緒に大学生活送りたいとは思わないか?」
セカルにじっと見つめられ、カイトが少し慌てる。
「え…そりゃ、出来ることなら…」
視線を上げて天井を眺めながら、セカルと並んで大学に通う姿を想像した。
「すごく…行きたいです」
「だろ?」
「でも待って!だいぶあんたに乗せられてる気がするんだけど!?そもそもあたしの成績じゃ入れないし!」
セカルに流されかけて、カイトがツッコむ。
「それを決めつけるのはまだ早いだろ」
「模試の結果見たのに?」
「うん…まあ想像してた通り…いや、ちょっと想定より悪い…」
セカルが頭を抱える。
「ダメじゃん!」
「だから!オレが勉強見るから!お前が望むなら、オレも精一杯力になる。頑張って一緒の大学入ろう」
セカルの真っ直ぐな眼差しを見て、カイトは本気だと悟る。
「入りたいけど…いくらセカルに見てもらったって、あたしの頭じゃ…」
「いや、何とかする。この1年はみっちり勉強してもらう」
「え!だって、折角付き合えたんだから、デートとかしたいじゃない?」
「お前もう3年に上がるんだぞ?勉強が最優先だろ」
セカルがピシャリと言う。
「そんな…この間キスをせがんできた人とは思えない台詞…」
カイトがわざとらしく言ってきたので、セカルは控え目に机を叩いてツッコんだ。
「今だってしたいわ!」
「その勢いで言うことじゃないでしょ?!」
セカルは目線を外しながら、
「…したいですけど」
小さな声で呟いた。
「し、してもいいですけど…?」
カイトがおずおずと返事をする。
「雰囲気とかあるだろ…?」
少し気まずい空気が流れる。
セカルが咳払いをした。
「オレが勉強見るならさ、大義名分にもなるだろ」
「大義名分?」
「それを理由に、オレの下宿に泊まりに来れるってこと」
「え?」
カイトがポカンとする。
「ご両親に、オレと付き合ってること、志望校のこと、勉強を見てもらうことを話せ」
「え?え?!」
「そうすれば、泊まりに来てもいいだろ」
「親に話すの?!」
「嫌か?」
「は、恥ずかしいでしょ…」
カイトは両頬を手で覆う。
「いつかは言うんだろ?」
「そうですけど…」
「じゃあ別に隠す必要ないだろ?」
「隠す気はないけど…」
カイトの様子を見ながら、セカルは付け加えた。
「それと、ご両親に話す時は『本気です』って伝えといて」
「へ?」
「だってそうだろ?遊びで付き合うわけじゃないんだから」
「そ、そうですけど!そんなこと親に言うのは…」
カイトが真っ赤になって俯く。
「…嫌か?」
「セカルがそうやって考えてくれてることは嬉しいよ。たくさんいっぺんに言われて、頭が追い付いてないだけで…」
「うん」
セカルはカイトの言葉を待った。
少し間を空けて、カイトは顔を上げた。
「…分かった。セカルの大学目指してみる。パパとママにも言う。セカル先生、勉強教えてください」
カイトが真っ直ぐにセカルを見る。
セカルは微笑んで頷いた。
「ああ。教え甲斐ありそうだ」
「お手柔らかにお願いします…」
カイトが縮こまりながら言う。
「何言ってんだ?今からじゃギリギリなんだから、ビシバシ行くぞ」
「ええー?!ちょっとは優しくしてよ!」
セカルは笑いながら、カイトの隣に座り直した。
「じゃあ今は、ちょっと優しくしてやる」
セカルはカイトの肩を引き寄せた。
カイトはドキリとする。
「えっと…?」
「キスしてもいいんだろ?」
「そう言いましたけど…心の準備が…」
「準備出来るまで待ちます」
「もう!こんな至近距離で待たれても困るから、一思いにどうぞ!」
「一思いって何だよ」
セカルは笑いながら、顔を寄せた。
カイトが目を瞑るのを見てから、唇を重ねた。
「…さて」
「ハイ」
カイトが熱くなった顔を扇ぎながら返事をする。
「お前の苦手教科と理解度を見て、対策を考える」
「あ…かなり本格的だね?」
「そりゃそうだ。言い出したのオレだしな」
「すっごいありがたいです」
「彼女がバカなままなのも困るからな」
「あー!ストレートにバカって言った!」
「バカな子ほど可愛いとは言うけど…」
「あたし可愛い?」
カイトが両頬に人差し指を当てて、首を傾げる。
あざといポーズに、セカルは少し目を逸らす。
「…可愛いよ。でもここまで言って頭悪いままだったら、愛想尽かすからな」
さらりと言われ、カイトが固まる。
「何だろう、褒められたような、釘を刺されたような…」
「頑張れってこと。オレも提案した責任は取るから」
「責任って?」
カイトの問いに、セカルは見つめながら答える。
「どうしてもお前とまた一緒に学生生活送りたいと思って、こんな提案しちまった。その責任」
カイトも静かに見つめ返した。
「あたしも…またセカルと同じ学校に通いたいよ」
「ああ」
「頑張ります」
カイトがグッと両手を握る。
「一緒に頑張りましょう」
セカルがカイトの頭を撫でた。
*****
「パパ、ママ、話があるんだけど…」
食卓でカイトがそう切り出したので、リビングにいたクウトも耳を傾ける。
「あたし、せ…セカルと付き合うことになりまして」
父はウッと息を飲む。
「え?ずっと付き合ってたでしょ」
母はキョトンとする。
「え!?付き合ってなかったし!」
カイトがブンブンと手を振って否定する。
「二人で散々出掛けてたのにね」
クウトがやれやれとぼやく。
「クウトは口を挟まないの!」
「そうなの~?やっとゴールインしたのねぇ」
母が喜ぶ。
「ゴールインって…。あ、あの、それでね、ここからが本題になるんだけど」
両親がカイトの言葉を待つ。
「セカルに勉強見てもらって、○○大を受けようと思います」
「え!?」
両親が驚く。クウトが深いため息をついた。
「セカルに唆されたんでしょ」
「まあ簡単に言えばそうなんだけど!でもあいつの言うことは理に敵ってるし…」
「そうやってセカルにハメられてんの分かってんの?」
「ハメられてる?」
目をパチクリとするカイト。
「イイように仕向けられてるってこと」
「そ、そんな男の子なのかい…?」
セカルと面識のない父が恐る恐る訊ねると、母が口を挟む。
「やだ!セカルくんに限ってそんなことないわよ!凄く良い子よ~。礼儀正しくて頭も良くてイケメン!カイトにはもったいないくらいなんだから」
母はセカルのことをえらくお気に入り。
「それはそうなんだけどさ~…。とにかく!この1年頑張って○○大に入るから!」
「うん…目標が出来たのはいいことだね」
「うんうん、パパも応援してね!それでね、これから電話も増えるから、部屋から声が聞こえるのゴメンっていうのと…」
少しカイトがもごもごする。
「…たまに泊まりに行こうと思います」
クウトがしかめっ面をした。
「あの男は…。姉ちゃん、意味分かってんの!?」
「えっ何が」
「ほら絶対分かってない!あいつ、ホント好き勝手に進めやがって!」
「ちょっと、何怒ってるのよ?」
「まあまあ。遠距離でお付き合いするんだから、たまには会いに行きたいわよね?」
母がフォローに入る。
「そう!そうなの!これから会えなくなるの寂しくて~…」
「ねえお父さん、カイトもそろそろ独り立ちする頃なんだし、あとは本人達に任せていいわよね?」
「…そうだね」
父は何とも言えない哀しみを帯びた顔で返事をした。
クウトはわざとらしくハーッとため息をついた。
「あ、あと…」
カイトが人差し指を合わせてもごもごと言う。
「まだ何かあんの?」
クウトがジロリと見た。
「もう!なんでそう攻撃体制なのよ!」
「こっちはおなかいっぱいなんだよ」
「それはさっきご飯食べたからでしょ?」
「そういう意味じゃないけど…何?」
クウトが諦めた目で会話を促す。
「セカルが…ご両親に、『本気です』って言っておいてって…」
「まあまあ!」
母が頬に手をやって嬉しそうに笑った。
クウトはげんなりした顔をする。
「父ちゃん…残念ながら、姉ちゃんにはもう逃げ道ないよ」
「そうみたいだね…」
娘が思ったよりも早く手元を離れそうで、父は哀しみの表情で遠くを見ていた。
「セカルは根回し早くて、したたかなのがムカつくんだよねー」
そう呟きながら、クウトはスマホを弄り始める。
「あんまり姉ちゃんに変なこと吹き込むなって言っとく」
「あら、クウトもセカルくんの連絡先知ってるの?仲良しなのね」
母がニッコリする。
「そういうんじゃないし」
クウトはふて腐れながら自室に戻り、セカルにメールを送信した。
『うちの純粋無垢を汚すのやめてもらえます?』
セカルはクウトから来たメールを見て、眉をひそめた。思い当たることが多すぎる…が、まずは軽くジャブを打つ。
『何のことだ?』
『泊まらせて何すんの?』
クウトの質問に、セカルはシラを切る。
『勉強させる』
『他の目的あるでしょ』
間髪入れずクウトがツッコんできたので、
「あんのマセガキ…」
とセカルは呟いた。
『お前は首突っ込むな。いい加減姉離れしろ』
『姉離れじゃなくて、弟離れが出来てないんだよ。おれがお世話しなきゃ、姉ちゃんは何も出来ないんだから』
この無自覚シスコンが…とセカルは悪態をつく。
『じゃあ肩の荷が下りただろ。預かるぞ』
『預かるってのは、返す気あるの?』
『返してほしいのか?』
クウトが「はあ?」と声を漏らす。
『返品するようなら渡しませんけど。ちゃんと責任持ってよね』
『返品する気はないから、安心して任せろ』
「何が安心しろだ!」
思わずクウトが叫んだ。
「ちょっとクウト、何叫んでんの?」
隣の部屋からカイトがやって来る。
「姉ちゃんは黙ってて!っていうかそもそも姉ちゃんのせいだからね!」
「何が?」
「人の気も知らないで!」
「だから何怒ってるのよ!?」
わけも分からず怒られるカイト。
クウトは「こっちの話!」と言いながら、セカルに返信した。
『やっぱり渡さないから』
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1年半ほどの両片想いを経て、ようやく付き合い始めた頃。
たまに初々しさが出る。セカルの根回しの早さが分かる話。こういう男です。
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(セカル高3、カイト高2、クウト中3で卒業後の3月)
セカルの部屋にカイトが来た。
床に置いてあるテーブルを挟んで、向かい合わせで座って話をする。
「模試の結果持ってこいってどういうこと?」
「見せてみろ」
「どうせ出来ませんけど?」
カイトが口を尖らせながら用紙を渡す。
「分かってる。現状把握のため」
セカルが用紙を広げて、結果を眺める。
カイトはジュースを飲みながら、セカルの様子を眺めていた。
しばらくして、セカルは重々しく口を開いた。
「カイト、志望校どこ?」
「え?うーん、ハッキリ決まってないけど、一応この辺…っていつも書いてる」
模試の志望欄を指さす。県内の大学だった。
「具体的に何かやりたいことがあるわけじゃないんだな?」
「うん…まだ分かんない」
「なら、絶対にここに入りたいってわけじゃないな?」
「うん…?」
セカルの立て続けの質問に、カイトが首を傾げる。
「あのさ、オレと同じ大学受ける気ない?」
「えっ?!」
カイトが大きな声を上げた。
「無理でしょ無理!セカル、偏差値いくつだと思ってるの?!」
「そう言うと思った。でもな、学部によって結構差があるんだよ」
セカルは学校の資料をテーブルに広げ始めた。
カイトはポカンとしながら一緒に見る。セカルが資料を指差した。
「総合学部とかは案外低い」
「あ、ホントだ。全然違う」
「今やりたいことがないなら、こういう所に入って色々と学んで、やりたいことを探すのもアリだと思う。そういう面では、こういう学部が最適」
「うん…?」
話の意図が分からず、カイトはキョトンとする。
「カイト、オレと一緒に大学生活送りたいとは思わないか?」
セカルにじっと見つめられ、カイトが少し慌てる。
「え…そりゃ、出来ることなら…」
視線を上げて天井を眺めながら、セカルと並んで大学に通う姿を想像した。
「すごく…行きたいです」
「だろ?」
「でも待って!だいぶあんたに乗せられてる気がするんだけど!?そもそもあたしの成績じゃ入れないし!」
セカルに流されかけて、カイトがツッコむ。
「それを決めつけるのはまだ早いだろ」
「模試の結果見たのに?」
「うん…まあ想像してた通り…いや、ちょっと想定より悪い…」
セカルが頭を抱える。
「ダメじゃん!」
「だから!オレが勉強見るから!お前が望むなら、オレも精一杯力になる。頑張って一緒の大学入ろう」
セカルの真っ直ぐな眼差しを見て、カイトは本気だと悟る。
「入りたいけど…いくらセカルに見てもらったって、あたしの頭じゃ…」
「いや、何とかする。この1年はみっちり勉強してもらう」
「え!だって、折角付き合えたんだから、デートとかしたいじゃない?」
「お前もう3年に上がるんだぞ?勉強が最優先だろ」
セカルがピシャリと言う。
「そんな…この間キスをせがんできた人とは思えない台詞…」
カイトがわざとらしく言ってきたので、セカルは控え目に机を叩いてツッコんだ。
「今だってしたいわ!」
「その勢いで言うことじゃないでしょ?!」
セカルは目線を外しながら、
「…したいですけど」
小さな声で呟いた。
「し、してもいいですけど…?」
カイトがおずおずと返事をする。
「雰囲気とかあるだろ…?」
少し気まずい空気が流れる。
セカルが咳払いをした。
「オレが勉強見るならさ、大義名分にもなるだろ」
「大義名分?」
「それを理由に、オレの下宿に泊まりに来れるってこと」
「え?」
カイトがポカンとする。
「ご両親に、オレと付き合ってること、志望校のこと、勉強を見てもらうことを話せ」
「え?え?!」
「そうすれば、泊まりに来てもいいだろ」
「親に話すの?!」
「嫌か?」
「は、恥ずかしいでしょ…」
カイトは両頬を手で覆う。
「いつかは言うんだろ?」
「そうですけど…」
「じゃあ別に隠す必要ないだろ?」
「隠す気はないけど…」
カイトの様子を見ながら、セカルは付け加えた。
「それと、ご両親に話す時は『本気です』って伝えといて」
「へ?」
「だってそうだろ?遊びで付き合うわけじゃないんだから」
「そ、そうですけど!そんなこと親に言うのは…」
カイトが真っ赤になって俯く。
「…嫌か?」
「セカルがそうやって考えてくれてることは嬉しいよ。たくさんいっぺんに言われて、頭が追い付いてないだけで…」
「うん」
セカルはカイトの言葉を待った。
少し間を空けて、カイトは顔を上げた。
「…分かった。セカルの大学目指してみる。パパとママにも言う。セカル先生、勉強教えてください」
カイトが真っ直ぐにセカルを見る。
セカルは微笑んで頷いた。
「ああ。教え甲斐ありそうだ」
「お手柔らかにお願いします…」
カイトが縮こまりながら言う。
「何言ってんだ?今からじゃギリギリなんだから、ビシバシ行くぞ」
「ええー?!ちょっとは優しくしてよ!」
セカルは笑いながら、カイトの隣に座り直した。
「じゃあ今は、ちょっと優しくしてやる」
セカルはカイトの肩を引き寄せた。
カイトはドキリとする。
「えっと…?」
「キスしてもいいんだろ?」
「そう言いましたけど…心の準備が…」
「準備出来るまで待ちます」
「もう!こんな至近距離で待たれても困るから、一思いにどうぞ!」
「一思いって何だよ」
セカルは笑いながら、顔を寄せた。
カイトが目を瞑るのを見てから、唇を重ねた。
「…さて」
「ハイ」
カイトが熱くなった顔を扇ぎながら返事をする。
「お前の苦手教科と理解度を見て、対策を考える」
「あ…かなり本格的だね?」
「そりゃそうだ。言い出したのオレだしな」
「すっごいありがたいです」
「彼女がバカなままなのも困るからな」
「あー!ストレートにバカって言った!」
「バカな子ほど可愛いとは言うけど…」
「あたし可愛い?」
カイトが両頬に人差し指を当てて、首を傾げる。
あざといポーズに、セカルは少し目を逸らす。
「…可愛いよ。でもここまで言って頭悪いままだったら、愛想尽かすからな」
さらりと言われ、カイトが固まる。
「何だろう、褒められたような、釘を刺されたような…」
「頑張れってこと。オレも提案した責任は取るから」
「責任って?」
カイトの問いに、セカルは見つめながら答える。
「どうしてもお前とまた一緒に学生生活送りたいと思って、こんな提案しちまった。その責任」
カイトも静かに見つめ返した。
「あたしも…またセカルと同じ学校に通いたいよ」
「ああ」
「頑張ります」
カイトがグッと両手を握る。
「一緒に頑張りましょう」
セカルがカイトの頭を撫でた。
*****
「パパ、ママ、話があるんだけど…」
食卓でカイトがそう切り出したので、リビングにいたクウトも耳を傾ける。
「あたし、せ…セカルと付き合うことになりまして」
父はウッと息を飲む。
「え?ずっと付き合ってたでしょ」
母はキョトンとする。
「え!?付き合ってなかったし!」
カイトがブンブンと手を振って否定する。
「二人で散々出掛けてたのにね」
クウトがやれやれとぼやく。
「クウトは口を挟まないの!」
「そうなの~?やっとゴールインしたのねぇ」
母が喜ぶ。
「ゴールインって…。あ、あの、それでね、ここからが本題になるんだけど」
両親がカイトの言葉を待つ。
「セカルに勉強見てもらって、○○大を受けようと思います」
「え!?」
両親が驚く。クウトが深いため息をついた。
「セカルに唆されたんでしょ」
「まあ簡単に言えばそうなんだけど!でもあいつの言うことは理に敵ってるし…」
「そうやってセカルにハメられてんの分かってんの?」
「ハメられてる?」
目をパチクリとするカイト。
「イイように仕向けられてるってこと」
「そ、そんな男の子なのかい…?」
セカルと面識のない父が恐る恐る訊ねると、母が口を挟む。
「やだ!セカルくんに限ってそんなことないわよ!凄く良い子よ~。礼儀正しくて頭も良くてイケメン!カイトにはもったいないくらいなんだから」
母はセカルのことをえらくお気に入り。
「それはそうなんだけどさ~…。とにかく!この1年頑張って○○大に入るから!」
「うん…目標が出来たのはいいことだね」
「うんうん、パパも応援してね!それでね、これから電話も増えるから、部屋から声が聞こえるのゴメンっていうのと…」
少しカイトがもごもごする。
「…たまに泊まりに行こうと思います」
クウトがしかめっ面をした。
「あの男は…。姉ちゃん、意味分かってんの!?」
「えっ何が」
「ほら絶対分かってない!あいつ、ホント好き勝手に進めやがって!」
「ちょっと、何怒ってるのよ?」
「まあまあ。遠距離でお付き合いするんだから、たまには会いに行きたいわよね?」
母がフォローに入る。
「そう!そうなの!これから会えなくなるの寂しくて~…」
「ねえお父さん、カイトもそろそろ独り立ちする頃なんだし、あとは本人達に任せていいわよね?」
「…そうだね」
父は何とも言えない哀しみを帯びた顔で返事をした。
クウトはわざとらしくハーッとため息をついた。
「あ、あと…」
カイトが人差し指を合わせてもごもごと言う。
「まだ何かあんの?」
クウトがジロリと見た。
「もう!なんでそう攻撃体制なのよ!」
「こっちはおなかいっぱいなんだよ」
「それはさっきご飯食べたからでしょ?」
「そういう意味じゃないけど…何?」
クウトが諦めた目で会話を促す。
「セカルが…ご両親に、『本気です』って言っておいてって…」
「まあまあ!」
母が頬に手をやって嬉しそうに笑った。
クウトはげんなりした顔をする。
「父ちゃん…残念ながら、姉ちゃんにはもう逃げ道ないよ」
「そうみたいだね…」
娘が思ったよりも早く手元を離れそうで、父は哀しみの表情で遠くを見ていた。
「セカルは根回し早くて、したたかなのがムカつくんだよねー」
そう呟きながら、クウトはスマホを弄り始める。
「あんまり姉ちゃんに変なこと吹き込むなって言っとく」
「あら、クウトもセカルくんの連絡先知ってるの?仲良しなのね」
母がニッコリする。
「そういうんじゃないし」
クウトはふて腐れながら自室に戻り、セカルにメールを送信した。
『うちの純粋無垢を汚すのやめてもらえます?』
セカルはクウトから来たメールを見て、眉をひそめた。思い当たることが多すぎる…が、まずは軽くジャブを打つ。
『何のことだ?』
『泊まらせて何すんの?』
クウトの質問に、セカルはシラを切る。
『勉強させる』
『他の目的あるでしょ』
間髪入れずクウトがツッコんできたので、
「あんのマセガキ…」
とセカルは呟いた。
『お前は首突っ込むな。いい加減姉離れしろ』
『姉離れじゃなくて、弟離れが出来てないんだよ。おれがお世話しなきゃ、姉ちゃんは何も出来ないんだから』
この無自覚シスコンが…とセカルは悪態をつく。
『じゃあ肩の荷が下りただろ。預かるぞ』
『預かるってのは、返す気あるの?』
『返してほしいのか?』
クウトが「はあ?」と声を漏らす。
『返品するようなら渡しませんけど。ちゃんと責任持ってよね』
『返品する気はないから、安心して任せろ』
「何が安心しろだ!」
思わずクウトが叫んだ。
「ちょっとクウト、何叫んでんの?」
隣の部屋からカイトがやって来る。
「姉ちゃんは黙ってて!っていうかそもそも姉ちゃんのせいだからね!」
「何が?」
「人の気も知らないで!」
「だから何怒ってるのよ!?」
わけも分からず怒られるカイト。
クウトは「こっちの話!」と言いながら、セカルに返信した。
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