恋人のふり
【2023.9.18】
付き合ってない両片想いのセカカイが、恋人のふりをしてWデートする話。
恋人以上に恋人(付き合ってない)
---------------------
(セカル高3、カイト高2で10月)
カイトに一緒に帰ろうと誘われ、カイトの部活が終わるまでセカルは図書室で勉強して時間を潰す。
夕方に落ち合って、帰り道を歩いていると、
「セカル!お願いがあるの!」
カイトが額の前でパンッと両手を合わせた。
こういう頼み方をする時は、どうせろくなことじゃない。
セカルはため息をつきながら、
「…なんだよ?」
と訊ねた。
「中学の友達と久々に会って話しててさー、その、つい見栄張っちゃって…勢いに任せて、ウソをついちゃったんだよねー…」
カイトがもごもごと言うので、セカルは少しイラッとして促す。
「だから何だよ?ハッキリ言え」
セカルの冷たい目線に堪らず、カイトが大声を上げる。
「彼氏居るって言っちゃったんです!ダブルデートしようって言われたから、ついて来てほしいです!」
カイトは合わせた手を頭上に掲げて、顔を下げた。
「は?」
セカルはこの上ないほど目を見開いたが、下を向いていたカイトにその表情は見えなかった。
「…それで、オレに彼氏役をやれと」
「だって!一番…その、み、身近にいる男子じゃない?」
カイトは言葉を濁す。
どうしてセカルを選ぶのか、理由は明白。お互いに好き合っているから。…なんて、言い出すことは出来ないので、どちらもまともに顔を合わせられない。
「まあ…別に、やってもいいけど」
セカルの内心は、他の男に頼まれたらたまったものではない。
何がなんでも立候補する気だが、渋々といった顔で引き受ける。
「ホント?」
カイトがパッとセカルを見る。目が合うと、ハッとしてお互いに目を逸らした。
「仕方なくだぞ?お前の嘘に付き合うために仕方なく!」
「分かってるわよ!ゴメンねこんな見栄っぱり女の彼氏役させて!」
お互いに赤い顔を見せることが出来ないので、明後日の方向を見ながら言い合った。
ダブルデート当日、
「おまたせー!」
待ち合わせ場所で、カイトが元気良くセカルのもとに駆け寄る。
白いワンピースに青いジャケットを羽織っている。
いつもより幾分か女の子っぽさを感じる。
スマホを弄っていたセカルは顔を上げ、少しポカンとする。
「どうかした?」
「いや…いつもと服装が違うから」
「ちょっとオシャレしてみました!」
カイトはスカートを軽く摘まみ、くるっと回転して見せる。
「ふふ、どーお?」
カイトが訊ねると、
「…可愛い」
思わずセカルが呟いた。
カイトがビックリして固まる。
「へ…?」
「ちが、彼氏役だから!そういう風に褒めると思って!」
セカルが慌てて弁明する。カイトも慌てる。
「そ、そうだよね!か、彼氏だったらそう言うもんね!」
お互いにプシューと音が出そうな赤い顔で言った後、
「行くか…」
「うん…」
顔を上げずに歩き出した。
友達のカップルと合流して、挨拶をする。
「早水セカルです」
「同じ高校の先輩です!よろしくねー」
カイトがニッコリして、友達にセカルを紹介する。
「よろしくお願いしまーす!へー、先輩なんだ!出会いはどこで?」
友達に聞かれると、
「えっと…」
カイトがチラリとセカルを見る。
どこまで言ったもんかと考えているカイトの表情を察して、セカルが口を開いた。
「カイトが人助けをしてるのを見て、それで良い子だなと思ったのが最初かな」
「えー!その話詳しく聞かせてほしいです!」
「それは内緒で」
友達の言葉を受けて、セカルがにこやかにかわす。
隣で見ていたカイトは、気後れする。
「カイトは?どんな所を好きになったの?」
「え?」
カイトがセカルの顔を見ると目が合った。
「えっと…バイオリンを弾く姿がカッコよくて…」
セカルの目を見たまま、たじたじと話すカイトにセカルは驚く。が、表情には出さないようにグッと堪える。
「そっか~それは惚れちゃうね!じゃあ私達の話も聞いてよー!」
友達の話のターンになったので、カイトもセカルも深く突っ込まれずに済んでホッとした。
「じゃあ行こっか」
友達が歩き始める。
後ろをついていく時に、セカルがカイトの手を握った。
「えっ?」
カイトが声を上げ、慌てて自分で口を塞いだ。
「付き合ってる設定だろ。このくらいのことしないと、怪しまれるんじゃないか?」
セカルは何食わぬ顔で、カイトの手を引く。
「そうだね…」
カイトがもじもじしながら、セカルの手を握り返した。
お互いにぎこちなく、相手の手の感触を確かめる。大きさも随分と違う、そんなことを思いながら。
「…行くぞ」
セカルはカイトの手を引いて歩き出した。
遊園地で遊び、テンションが上がってくる。
「セカル、耳着けよ!」
カイトがキャラクターのカチューシャを持って、セカルに着けようとする。
「やだよ、何でだよ」
攻防をしながらも、雰囲気を楽しむ二人。
ゴーカートに乗る時は、
「どっちが運転する?」
「オレ。お前に任せられる気がしない」
「何でよ!上手いかもしれないじゃない!」
「お前の不器用さを知ってれば、大体どうなるか察しがつくんだよな」
待機列に並んでいる間はずっと言い合い、結局セカルの運転で楽しんだ。
昼食中、女子2人がトイレに立つ。
テーブルに男2人が残されると、友達の彼氏に話しかけられる。
「その、お二人は凄く仲良く見えて羨ましいです」
「え?」
セカルがきょとんとする。
「会話が自然で…世の中のカップルの距離感ってこんな感じなんだなーって勉強になります。俺は恋人らしく出来てんのかな?って自信なくて…」
気落ちする彼氏に、セカルがフォローする。
「いや、端から見て、恋人らしく仲良く見えるよ?オレらはその…友達の時からこんな感じだったから、その延長線でこういう接し方なだけで」
本当は恋人ではないけど…。心にチクリとトゲが刺さる。
「羨ましいですよ。仲良く接するコツとかあるんですか?」
「コツ…。好きな気持ちを包み隠さず伝えた方がいいんじゃないかな?そうしたら、お互いに相手の隣に居たいって気持ちが溢れて、自然に仲良く見えてくると思うよ」
自分がやっていることと正反対。完全にブーメランだなと思いつつ、セカルは自分に言い聞かせるように言った。
段々と日が暮れてくる。
少し暗くなってきた園内を歩いていると、カイトがセカルの腕に自分の腕を絡めた。
「…へ」
セカルが驚き、変な声が出る。
「ほら、こうした方が恋人っぽいじゃない?」
「それは、まあ…」
手を繋いでいた時より一気に距離が縮まり、体が密着する。
「振りよ、振り!恋人のふり、ちょっと楽しくなってきたから、それなら存分に楽しもうと思って」
カイトの言葉に、セカルも乗っかる。
「…そうか、そうだな。今日帰るまでは、お前と恋人だもんな」
セカルが柔らかに微笑むので、カイトがドキリとする。
「えっと…?」
「あと少し、楽しむことにするよ」
セカルはカイトの髪に顔を近付けると、唇を当てた。
「え…えっ!?」
一瞬のことに、何が起こったか分からず慌てるカイトを見て、
「ほら、あんまり遅れると不審がられるぞ」
カイトの腕を絡めたまま、セカルが早足で友達を追いかけた。
ナイトパレードを見ながら、暗い中でカイトとセカルは腕を絡めたままだった。
お互いに、たまにぎゅっと力を入れてしがみつく。
ドキドキしながらも、相手の体温を心地よく感じる。
「綺麗だな」
「うん」
「お前の顔がな?」
「え?」
カイトのビックリした顔を見て、セカルは満足そうに微笑む。
「光に照らされて、楽しそうな顔が輝いて見えるんだよ。綺麗だと思った」
「あ、ありがとう…」
カイトは真っ赤になって俯く。
「下向くなよ?もっとお前の顔見てたいんだから」
「もう!からかってるでしょ!?」
カイトが赤い顔のまま怒ってみせる。セカルは笑い続けた。
恋人のふりをしてるから言ったの?それとも本心で…?
カイトから、その疑問を投げかけることは出来ない。
「カイト」
セカルの穏やかな表情が、パレードの光に照らされる。
「今日一日、楽しかった。ありがとな」
「あたしも…楽しかったよ」
「そうか」
セカルは腕をほどくと、静かにカイトの肩を抱いた。
それに答えるように、カイトはセカルの肩に頭を乗せた。
どちらも何も言わず、キラキラと輝くパレードを眺めていた。
「お疲れ様ー!こんな時間になっちゃったね。楽しくて帰りたくないよ~」
友達が元気に話す。
「あたしもー!すっごい楽しかった!」
「彼氏さんが、カイトのこと大事にしてるのが分かって安心しました!」
「え?」
セカルがポカンとする。
「しかもラブラブ見せつけられちゃうし~私達も負けられないなって思いました!ね?」
友達は彼氏に抱きついた。
「はい。俺らもお二人みたいに仲良くやってこうと思います」
本物の恋人の二人を見ながら、カイトとセカルは顔を見合わせる。
セカルがふっと笑うと、カイトの肩を引き寄せた。
カイトは驚いたが、そのまま身を委ねた。
「また一緒に呼んでください。多分その時は、オレらももっと仲良くなってると思うので」
セカルがそう話すと、友達から「もちろん!」と返事が返ってきた。
カイトの家へと帰路を歩く二人は、手を繋いでいた。
友達と別れて、もう恋人のふりをする必要はなかったが、どちらも手を離そうとはしなかった。
「一日長かったですなあ」
カイトがのんびりとした口調で話す。
「そうだな」
「普段とちょっと違って、楽しかったね」
「たまには、趣向を変えてみるのも面白いな」
セカルはカイトの手を握り直し、恋人繋ぎにした。
カイトはビックリする。
「あの…もういいんですけど?」
「帰るまでは恋人だって言ったろ?お前の嘘に付き合ってるだけだからな」
「むー、あたしの彼氏、イジワルだなあ」
カイトは頬を膨らませながら言ってから、ふと立ち止まった。
「オイ、何だよ?」
セカルの問いかけに、カイトがぼそりと言う。
「…これさ、帰らなかったら、恋人のままなのかな」
カイトが呟くと、沈黙が落ちた。
「…そうかもな」
セカルがじっとカイトを見つめると、カイトも見つめ返した。
突然カイトがイタズラっぽく笑って、セカルの手を振り払った。
「嘘ウソ、ぜーんぶウソ!今日のこと、全部ウソなんだから、忘れてね。あたしの体を勝手に触ったことも、ひろーい心で許してあげるから」
カイトがべーと舌を出した。
「…雰囲気出しただけだろ。好きで触ったわけじゃない」
「あー!よくそういうこと言えるね!?下心丸出しだったクセに!」
カイトに言われ、セカルが狼狽える。
「し、下心…っ!?元はといえば、誰のせいでこんなことになったか忘れたのか?」
「う…すみませんでした」
カイトが頭を下げたので、セカルがふっと笑った。
「悪かった。今日のことはお互いにチャラな。オレも忘れる」
「…うん」
そう返事をしながら顔を上げたカイトの表情は、寂しそうに見えた。セカルは息を飲む。
「…最後にさ」
セカルが口を開く。
「うん?」
カイトが聞き返す。
「恋人として、言っていいか?」
セカルの目を見て、
「…はい」
カイトが返事をした。
セカルが息を吸った。
「今日のカイトは可愛かった…いや、いつも可愛いな。普段より更に可愛く見えた。それから、たまにしおらしくなる表情が愛しくて、逆に強気に来る所も可愛らしい。もうどの場面でも最高に可愛く見え…」
「わー!!!」
カイトがセカルの言葉を遮って、大声を上げた。
「無理!無理だから!何?何この羞恥プレイ!?それ以上言わないで!」
「何でだよ」
「わざと言ってるでしょ!」
「まあ…彼氏らしく、彼女のこと褒めとこうと思って」
「そういうの要らないから!もう帰るね!バカ!」
「シンプルな捨て台詞だな」
カイトが小走りで距離を取った後、くるっと振り返った。
「今日のセカル、カッコよかったよ。あたしのことリードして、いつも通り気遣いもバッチリ。ちょっと強引な所は、普段と違って男らしく見えたかな。色んな一面が見えて、ますます好きになっちゃった」
カイトがニッコリと微笑みかけると、セカルが固まった。
何とも言えない表情をするセカルを見て、カイトが噴き出した。
「なーんてね、恋人ごっこ、これで終わりね!それじゃ、また!」
カイトは勢いよく走っていった。
残されたセカルは、その場に立ち尽くした。
「…どう考えても、お互いに本心だろうが。バカ」
片手で顔を覆いながら、暗闇で独りごちた。
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付き合ってない両片想いのセカカイが、恋人のふりをしてWデートする話。
恋人以上に恋人(付き合ってない)
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(セカル高3、カイト高2で10月)
カイトに一緒に帰ろうと誘われ、カイトの部活が終わるまでセカルは図書室で勉強して時間を潰す。
夕方に落ち合って、帰り道を歩いていると、
「セカル!お願いがあるの!」
カイトが額の前でパンッと両手を合わせた。
こういう頼み方をする時は、どうせろくなことじゃない。
セカルはため息をつきながら、
「…なんだよ?」
と訊ねた。
「中学の友達と久々に会って話しててさー、その、つい見栄張っちゃって…勢いに任せて、ウソをついちゃったんだよねー…」
カイトがもごもごと言うので、セカルは少しイラッとして促す。
「だから何だよ?ハッキリ言え」
セカルの冷たい目線に堪らず、カイトが大声を上げる。
「彼氏居るって言っちゃったんです!ダブルデートしようって言われたから、ついて来てほしいです!」
カイトは合わせた手を頭上に掲げて、顔を下げた。
「は?」
セカルはこの上ないほど目を見開いたが、下を向いていたカイトにその表情は見えなかった。
「…それで、オレに彼氏役をやれと」
「だって!一番…その、み、身近にいる男子じゃない?」
カイトは言葉を濁す。
どうしてセカルを選ぶのか、理由は明白。お互いに好き合っているから。…なんて、言い出すことは出来ないので、どちらもまともに顔を合わせられない。
「まあ…別に、やってもいいけど」
セカルの内心は、他の男に頼まれたらたまったものではない。
何がなんでも立候補する気だが、渋々といった顔で引き受ける。
「ホント?」
カイトがパッとセカルを見る。目が合うと、ハッとしてお互いに目を逸らした。
「仕方なくだぞ?お前の嘘に付き合うために仕方なく!」
「分かってるわよ!ゴメンねこんな見栄っぱり女の彼氏役させて!」
お互いに赤い顔を見せることが出来ないので、明後日の方向を見ながら言い合った。
ダブルデート当日、
「おまたせー!」
待ち合わせ場所で、カイトが元気良くセカルのもとに駆け寄る。
白いワンピースに青いジャケットを羽織っている。
いつもより幾分か女の子っぽさを感じる。
スマホを弄っていたセカルは顔を上げ、少しポカンとする。
「どうかした?」
「いや…いつもと服装が違うから」
「ちょっとオシャレしてみました!」
カイトはスカートを軽く摘まみ、くるっと回転して見せる。
「ふふ、どーお?」
カイトが訊ねると、
「…可愛い」
思わずセカルが呟いた。
カイトがビックリして固まる。
「へ…?」
「ちが、彼氏役だから!そういう風に褒めると思って!」
セカルが慌てて弁明する。カイトも慌てる。
「そ、そうだよね!か、彼氏だったらそう言うもんね!」
お互いにプシューと音が出そうな赤い顔で言った後、
「行くか…」
「うん…」
顔を上げずに歩き出した。
友達のカップルと合流して、挨拶をする。
「早水セカルです」
「同じ高校の先輩です!よろしくねー」
カイトがニッコリして、友達にセカルを紹介する。
「よろしくお願いしまーす!へー、先輩なんだ!出会いはどこで?」
友達に聞かれると、
「えっと…」
カイトがチラリとセカルを見る。
どこまで言ったもんかと考えているカイトの表情を察して、セカルが口を開いた。
「カイトが人助けをしてるのを見て、それで良い子だなと思ったのが最初かな」
「えー!その話詳しく聞かせてほしいです!」
「それは内緒で」
友達の言葉を受けて、セカルがにこやかにかわす。
隣で見ていたカイトは、気後れする。
「カイトは?どんな所を好きになったの?」
「え?」
カイトがセカルの顔を見ると目が合った。
「えっと…バイオリンを弾く姿がカッコよくて…」
セカルの目を見たまま、たじたじと話すカイトにセカルは驚く。が、表情には出さないようにグッと堪える。
「そっか~それは惚れちゃうね!じゃあ私達の話も聞いてよー!」
友達の話のターンになったので、カイトもセカルも深く突っ込まれずに済んでホッとした。
「じゃあ行こっか」
友達が歩き始める。
後ろをついていく時に、セカルがカイトの手を握った。
「えっ?」
カイトが声を上げ、慌てて自分で口を塞いだ。
「付き合ってる設定だろ。このくらいのことしないと、怪しまれるんじゃないか?」
セカルは何食わぬ顔で、カイトの手を引く。
「そうだね…」
カイトがもじもじしながら、セカルの手を握り返した。
お互いにぎこちなく、相手の手の感触を確かめる。大きさも随分と違う、そんなことを思いながら。
「…行くぞ」
セカルはカイトの手を引いて歩き出した。
遊園地で遊び、テンションが上がってくる。
「セカル、耳着けよ!」
カイトがキャラクターのカチューシャを持って、セカルに着けようとする。
「やだよ、何でだよ」
攻防をしながらも、雰囲気を楽しむ二人。
ゴーカートに乗る時は、
「どっちが運転する?」
「オレ。お前に任せられる気がしない」
「何でよ!上手いかもしれないじゃない!」
「お前の不器用さを知ってれば、大体どうなるか察しがつくんだよな」
待機列に並んでいる間はずっと言い合い、結局セカルの運転で楽しんだ。
昼食中、女子2人がトイレに立つ。
テーブルに男2人が残されると、友達の彼氏に話しかけられる。
「その、お二人は凄く仲良く見えて羨ましいです」
「え?」
セカルがきょとんとする。
「会話が自然で…世の中のカップルの距離感ってこんな感じなんだなーって勉強になります。俺は恋人らしく出来てんのかな?って自信なくて…」
気落ちする彼氏に、セカルがフォローする。
「いや、端から見て、恋人らしく仲良く見えるよ?オレらはその…友達の時からこんな感じだったから、その延長線でこういう接し方なだけで」
本当は恋人ではないけど…。心にチクリとトゲが刺さる。
「羨ましいですよ。仲良く接するコツとかあるんですか?」
「コツ…。好きな気持ちを包み隠さず伝えた方がいいんじゃないかな?そうしたら、お互いに相手の隣に居たいって気持ちが溢れて、自然に仲良く見えてくると思うよ」
自分がやっていることと正反対。完全にブーメランだなと思いつつ、セカルは自分に言い聞かせるように言った。
段々と日が暮れてくる。
少し暗くなってきた園内を歩いていると、カイトがセカルの腕に自分の腕を絡めた。
「…へ」
セカルが驚き、変な声が出る。
「ほら、こうした方が恋人っぽいじゃない?」
「それは、まあ…」
手を繋いでいた時より一気に距離が縮まり、体が密着する。
「振りよ、振り!恋人のふり、ちょっと楽しくなってきたから、それなら存分に楽しもうと思って」
カイトの言葉に、セカルも乗っかる。
「…そうか、そうだな。今日帰るまでは、お前と恋人だもんな」
セカルが柔らかに微笑むので、カイトがドキリとする。
「えっと…?」
「あと少し、楽しむことにするよ」
セカルはカイトの髪に顔を近付けると、唇を当てた。
「え…えっ!?」
一瞬のことに、何が起こったか分からず慌てるカイトを見て、
「ほら、あんまり遅れると不審がられるぞ」
カイトの腕を絡めたまま、セカルが早足で友達を追いかけた。
ナイトパレードを見ながら、暗い中でカイトとセカルは腕を絡めたままだった。
お互いに、たまにぎゅっと力を入れてしがみつく。
ドキドキしながらも、相手の体温を心地よく感じる。
「綺麗だな」
「うん」
「お前の顔がな?」
「え?」
カイトのビックリした顔を見て、セカルは満足そうに微笑む。
「光に照らされて、楽しそうな顔が輝いて見えるんだよ。綺麗だと思った」
「あ、ありがとう…」
カイトは真っ赤になって俯く。
「下向くなよ?もっとお前の顔見てたいんだから」
「もう!からかってるでしょ!?」
カイトが赤い顔のまま怒ってみせる。セカルは笑い続けた。
恋人のふりをしてるから言ったの?それとも本心で…?
カイトから、その疑問を投げかけることは出来ない。
「カイト」
セカルの穏やかな表情が、パレードの光に照らされる。
「今日一日、楽しかった。ありがとな」
「あたしも…楽しかったよ」
「そうか」
セカルは腕をほどくと、静かにカイトの肩を抱いた。
それに答えるように、カイトはセカルの肩に頭を乗せた。
どちらも何も言わず、キラキラと輝くパレードを眺めていた。
「お疲れ様ー!こんな時間になっちゃったね。楽しくて帰りたくないよ~」
友達が元気に話す。
「あたしもー!すっごい楽しかった!」
「彼氏さんが、カイトのこと大事にしてるのが分かって安心しました!」
「え?」
セカルがポカンとする。
「しかもラブラブ見せつけられちゃうし~私達も負けられないなって思いました!ね?」
友達は彼氏に抱きついた。
「はい。俺らもお二人みたいに仲良くやってこうと思います」
本物の恋人の二人を見ながら、カイトとセカルは顔を見合わせる。
セカルがふっと笑うと、カイトの肩を引き寄せた。
カイトは驚いたが、そのまま身を委ねた。
「また一緒に呼んでください。多分その時は、オレらももっと仲良くなってると思うので」
セカルがそう話すと、友達から「もちろん!」と返事が返ってきた。
カイトの家へと帰路を歩く二人は、手を繋いでいた。
友達と別れて、もう恋人のふりをする必要はなかったが、どちらも手を離そうとはしなかった。
「一日長かったですなあ」
カイトがのんびりとした口調で話す。
「そうだな」
「普段とちょっと違って、楽しかったね」
「たまには、趣向を変えてみるのも面白いな」
セカルはカイトの手を握り直し、恋人繋ぎにした。
カイトはビックリする。
「あの…もういいんですけど?」
「帰るまでは恋人だって言ったろ?お前の嘘に付き合ってるだけだからな」
「むー、あたしの彼氏、イジワルだなあ」
カイトは頬を膨らませながら言ってから、ふと立ち止まった。
「オイ、何だよ?」
セカルの問いかけに、カイトがぼそりと言う。
「…これさ、帰らなかったら、恋人のままなのかな」
カイトが呟くと、沈黙が落ちた。
「…そうかもな」
セカルがじっとカイトを見つめると、カイトも見つめ返した。
突然カイトがイタズラっぽく笑って、セカルの手を振り払った。
「嘘ウソ、ぜーんぶウソ!今日のこと、全部ウソなんだから、忘れてね。あたしの体を勝手に触ったことも、ひろーい心で許してあげるから」
カイトがべーと舌を出した。
「…雰囲気出しただけだろ。好きで触ったわけじゃない」
「あー!よくそういうこと言えるね!?下心丸出しだったクセに!」
カイトに言われ、セカルが狼狽える。
「し、下心…っ!?元はといえば、誰のせいでこんなことになったか忘れたのか?」
「う…すみませんでした」
カイトが頭を下げたので、セカルがふっと笑った。
「悪かった。今日のことはお互いにチャラな。オレも忘れる」
「…うん」
そう返事をしながら顔を上げたカイトの表情は、寂しそうに見えた。セカルは息を飲む。
「…最後にさ」
セカルが口を開く。
「うん?」
カイトが聞き返す。
「恋人として、言っていいか?」
セカルの目を見て、
「…はい」
カイトが返事をした。
セカルが息を吸った。
「今日のカイトは可愛かった…いや、いつも可愛いな。普段より更に可愛く見えた。それから、たまにしおらしくなる表情が愛しくて、逆に強気に来る所も可愛らしい。もうどの場面でも最高に可愛く見え…」
「わー!!!」
カイトがセカルの言葉を遮って、大声を上げた。
「無理!無理だから!何?何この羞恥プレイ!?それ以上言わないで!」
「何でだよ」
「わざと言ってるでしょ!」
「まあ…彼氏らしく、彼女のこと褒めとこうと思って」
「そういうの要らないから!もう帰るね!バカ!」
「シンプルな捨て台詞だな」
カイトが小走りで距離を取った後、くるっと振り返った。
「今日のセカル、カッコよかったよ。あたしのことリードして、いつも通り気遣いもバッチリ。ちょっと強引な所は、普段と違って男らしく見えたかな。色んな一面が見えて、ますます好きになっちゃった」
カイトがニッコリと微笑みかけると、セカルが固まった。
何とも言えない表情をするセカルを見て、カイトが噴き出した。
「なーんてね、恋人ごっこ、これで終わりね!それじゃ、また!」
カイトは勢いよく走っていった。
残されたセカルは、その場に立ち尽くした。
「…どう考えても、お互いに本心だろうが。バカ」
片手で顔を覆いながら、暗闇で独りごちた。
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